メルセデスとアストンマーティンが“波打ち”フロアを採用した理由は?

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バーレーンのプレシーズンテストにおいて、メルセデスは秘密にしていた W12 の新しいフロアを表に出した。アストンマーティンも、同じく“波打ち”効果を同様の位置に導入している。このフロアはどう機能するのか? また、これら2チームがこのデザインを採用した理由は? 今週の Tech Tuesday では、Giorgio Piola のイラスト共に、Mark Hughes が掘り下げる。

メルセデス W12 とアストンマーティン DBR21 の両方に囁かれるパフォーマンスに関する疑問には、シーズンが開幕する今週末のバーレーンで答えが出される。

両チームとも、テストの 3日間でトラブルにみまわれたが、設計を共有しているギアボックスに限ったものではなかった。アストンは一連のメカニカルトラブルに煩わされ、セバスチャン・ベッテルは最終日のトラックが最も速かった時間帯にアタックラップを刻むことができなかった。一方のメルセデスはハンドリングに苦しみ、今週末までに問題を理解しようと懸命に取り組んでいる。

ふたつのクルマは、大元の基本設計を同じくするが、両者はここ数年、独自の開発路線を歩んできた。そのため細部は徐々に異なってきているが、それでも空力哲学はほぼ同じである。

メルセデス W12 のフロアは、バーレーンのテストでお目見えすると、かなりの注目を集めた。とりわけ、バージボードエリア後方の側端に設けられたウェーブが顕著で、シーズン前まではありふれていた、減圧を狙った大きな切り欠きに取って代わっている。

アストンマーティンは、メルセデスと似た切り欠きをフロアエッジに施しているが、メルセデスよりも少ない(下図で確認できる)。彼らは双方の開発でほぼ同じことをしているが、複数の“波打ち”の特徴が、2台しかないローレーキ・カーの両方に出現したという点には、重要な意味があるのだろう(レーキ角とは、例えばこのような、リアからフロントまでの車高の傾きを言う)。

フロアエッジ跳ね上げの概念は、フロアエッジに沿って進む時計回りの空気の渦を生成してフロアの密閉を促進し、アンダーフロアと周囲との気圧差を増大させ、アンダーフロアで発生するダウンフォースを大きくするものである。

低速域では、アンダーフロアの空気の速度も減少するため、フロアを密閉するのは更に難しくなる。

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アストンマーティンメルセデスのフロア比較

メルセデスアストンマーティンのようなローレーキ・カーは、この気流の速度が(レッドブルのような)ハイレーキ・カーよりも遅くなる傾向にある。ハイレーキ・カーは、フロアアングルが大きく広がっているので、フロアの気流を活性化することができる。ローレーキ・カーは、フロア面積の削減という新しいレギュレーションの下においては、この気流の渦によってフロアを密閉する方法で、フロアの気流を更に活性化させる必要があったと考えられる。

ローレーキ・カーがハイレーキ・カーよりも解決が難しい別の空力的特徴としては、フロアの下で気流が周期的に反響することによるフラッター現象が挙げられる。これは、フロアでのダウンフォース生成には役に立たない撹乱作用である。

今年のフロア形状の改訂により、この特性がより容易に顕在化するようになり、フロアのカットアウトから生まれる空気の渦は、このサイクルを上手く断ち切ることができるのかもしれない。

いずれにせよ、これらのクルマの真の潜在能力が明らかになるのは、今週末の最も興味をそそる要素のひとつである。