出展:
アストンマーティンがワークスとして F1 に復帰して以来、4レースが消化されたが、結果としてたった5ポイントしか獲得できていない。しかし、マーク・ヒューズとジョルジョ・ピオラの解説によると、順位を上げていくため、彼らは技術面であらゆる手を尽くしているようだ。
アストンマーティンは、スペインでのポイント獲得はならなかったし、予選では Q2 と Q3 のカットオフ近辺をうろうろしているものの、2021年のレギュレーション変更によって失ったものを取り戻すべく、大掛かりな取り組みをおこなってきた。これは、レッドブルは例外かもしれないが、開幕戦以来最大のアップデートである。
イモラで導入された新しいサイドポッドとエンジンカバー、ポルティモアで出現した新しいフロア、ディフューザー、細かいベーンの相乗効果は、1周あたり0.5秒相当と見積もられているが、同じ期間でアルピーヌ、マクラーレン、およびフェラーリもパフォーマンスを向上させたため、相対的に順位は変わらなかった。
取り組みの中心となるのは、レギュレーション変更によるディフューザーの気流不足への対処だ。気流の減少は、アストンのようなローレーキカーでは顕著だった。
レギュレーションによって、リアのブレーキダクト上部のウィングレットの幅が狭められ、更にディフューザー外側のストレーキ長(高)が半分に減らされたことが、リアホイール内側の気流の維持を極めて困難にしている。気流がフロアの下に吸い込まれ、周辺に乱れが生じ、結果的にダウンフォースが減ってしまうのだ。
ブレーキダクトのウィングレットからの気流を、ディフューザーのストレーキの気流に合流させることは、気流が横道に逸れるのを防ぐのに非常に有効である。ウィングレットの幅が狭まると、このような合流が容易なことではなくなる。これはローレーキカー特有のもので、何故ならハイレーキカーの場合は、フロアが(ディフューザーごと)ブレーキダクトへ向けて持ち上がるからだ。
アストンはふたつの面でこの問題に取り組んでいる。まずは、エンジンカバーとサイドポッドの改善で、サイドポッドの傾斜が以前ほど極端ではなくなり、フロアに落ちる位置が後方に伸ばされている。この重要な車体後方部の収斂を違ったものにすることには、リアホイールとブレーキダクトの内側の気流と、より良く同調するよう整える意図がある。
ディフューザー外側のストレーキの形状変更と共に、車体のこの部分に到達する気流の角度を変えることにより、ブレーキダクトのウィングレットとディフューザーストレーキとの間で、それらが小さくなる前に実現されていた合流を再現しようとしているのだろう。
ふたつ目として、フロアを密閉し、フロア下へ気流が吸い込まれるのを防ぐことは、かつてないほど重要になってきており、チームは明らかにここに集中している。アストンは、メルセデスと同様、ローンチで Z形フロアを導入しており、それ以来、殆どのチームが使うようになっている。
フロア外縁部の Z形の切り欠き周辺では渦流が生まれ、Z の後方では、外縁部がフロア中央の段差と平行した直線となる長さをかせぐことができ、密閉を容易にしている。
アストンはこのフロアエッジを継続的に開発しており、開幕戦のバーレーンでは、Z の前に追加の切り欠きを入れた進化型を投入した。更なる進化型として、Z の前に三つ目の切り欠きを入れたものが、ポルトガルでのアップグレードの一環としてランス・ストロールのクルマに導入され、スペインではセバスチャン・ベッテルのクルマに導入された。
スペイングランプリの後、チームは大量のデータを分析し、アストンマーティンの努力は彼らの順位を上げるのに繋がるのか、今後のレースで明らかになるだろう。