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2021年、最速の2台による戦いが繰り広げられている。メルセデス W12 とレッドブル RB16B、ザントフォールトは、後者の特性と完全に一致し、メルセデスはいくつかの困難に見舞われた。
サーキットのデザインは、空力効率に優れるローレーキのメルセデスに比べ、ハイダウンフォースのレッドブルに有利だと考えられてはいたが、メルセデスにとって最も困難だったのは、右回りのターン2から、左回りのターン3へのアプローチだった。ターン3は劇的なバンクを持ち、フーゲンホルツコーナーと呼ばれている。
トラック上のこの僅かな区間だけで、メルセデスはレッドブルに対して0.18秒失っており、ラップタイムではメルセデスよりも遅いクルマにさえ、この区間では後れを取っていた。そこには、メルセデスにとって決定的に合わない何かがあるのだ。
メルセデスのアンドリュー・ショブリンはこう説明している。「バンクのあるコーナーは一般的ではないし、ターン2から3にかけては間違いなくトリッキーだ。そこには我々のマシンを悩ませる特別な要素があるのかもしれない」
バンクのあるコーナーへ向かうマシンは、アプローチの際に、その前のコーナーからの方向転換が残っていると、非常にやっかいな状態となる。見たところレッドブルはターン2を早めに抜けており、マックス・フェルスタッペンは、トラックの左側でターン2を抜けてから、楽にマシンを右側へ振って、ターン3へ理想的なアプローチを取っていた。
フェルスタッペンがマシンを右側へ向けることができたポイントで、メルセデスはまだターン2を抜けているところで、結果としてバンクへのライン取りが厳しくなり、妥協を強いられていた。
バルテリ・ボッタスによると、新しいトラックでの最初のセッションで、クルマはミドルセクターでかなりのオーバーステアで、これを修正しようとセットアップを変更すると、第1セクターで過度のアンダーステアになってしまった、とのことだ。このターン2でのアンダーステアは、後続のコーナー全体を通して、クルマの典型的な問題だったのかもしれない。
ショブリンは更にこう続けた「シミュレーション作業をおこなう場合、いつもは効果的なセットアップ方法が分かっているものだ。ここへ来て金曜日に走り始めると、シミュレーターで掴んでいたバランスとはかなり異なっていた。このため普段よりもセットアップ作業を多くおこなう必要が出たんだ」
チームは後から、メルセデスのロングホイールベースがこの問題の原因となっているかどうかを検討していた。確かに、ボッタスもルイス・ハミルトンも、バンクでフロントウィング右側のエンドプレートをたびたび擦っていた。ホイールベースが長いと、短いホイールベースのクルマに比べ、リアが乱れることによってフロントがより沈んでしまう。19度のバンク角によって右側にかかる荷重が増すと、状況は更に悪化する。
レッドブルにはこのような問題は出ておらず、フェルスタッペンはすぐに、この特殊なコーナーと、トラックを楽しんでいた。スパ以降、RB16B がアンダーフロアで発生するダウンフォースは、恐らくこのクルマ最大の長所で、フロア外端の Z部まわりの調整によって更に大きくなっている。
今やすべてのマシンが採用している Zフロアは、気流がフロアエッジの裏側へ抜けるときに渦を巻かせ、フロア全体を密閉する効果を生む。これは、同じ目的で使用され、'21年に禁止されたフロアスロットの役割を果たしている。
同じくスパ以降、レッドブルは、サイドポッド下部から Z部に向けて気流のチャネルを追加している。対になった羽根は間隔が徐々に狭くなっており、圧力を調整することで気流の速度を上げ、渦流を生成する Z部に到達すると、より速く巻くことができる。渦を速く、強くすれば、フロアの密閉効果は大きくなる。
「今や、ごく僅かなゲインを追及する段階だ」、シーズン後半の車体開発について、クリスチャン・ホーナーはこう語っている。「しかし、それを目指さなければならないんだ」