2021年 F1最終戦 アブダビGP 決勝

 抜群の反応速度と蹴り出しでホールショットを奪い、一枚上の速さをみせた王者ハミルトンが、残り20周での VSC も何のその、貫禄で逃げ切るように思われた。が、レース最終盤、ラティフィのウィリアムズがクラッシュ。デブリが散乱し、SC 導入。追いかけるレッドブルはフェルスタッペンにソフトタイヤを履かせ、レース再開に賭ける。

 そしてレースは残り1周で再開、流石のハミルトンも30周以上使ったハードタイヤでは対抗できず、ターン5でフェルスタッペンが前に出て、そのままチェッカーを受けた。

 47年ぶりに最終戦に同ポイントで突入したチャンピオン争いは、ファイナルラップでの劇的な逆転で幕切れ。フェルスタッペンがオランダ人として初の F1 ワールドチャンピオンに輝いた。

  1. マックス・フェルスタッペンレッドブル・ホンダ)
  2. ルイス・ハミルトンメルセデス
  3. カルロス・サインツフェラーリ
  4. 角田裕毅(アルファタウリ)

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オランダ人初のF1ワールドチャンピオン

 

 当然ながら、メルセデスは異議申し立てをおこなったので、厳密には結果は未確定。しかし、覆ることはないだろう。興行的要素を優先させた、ツッコミどころの多すぎるディレクションは、またもマイケル・マシの評価を下げることとなった。ただし結果は結果、マックス・フェルスタッペンはチャンピオンに相応しい。ルイス・ハミルトンも相応しいし、今日のウィナーに相応しいのは彼の方だ。彼らの前に他のドライバー達は、同じクルマに乗っているチームメイトでさえ太刀打ちできなかったのだから、どちらかがチャンピオンになるのは健全なことだと思う。マックスは、バクーではピレリが破裂、ブタペストではボッタスに撃墜されるという不運があり、これを鑑みると、最も強かったのはフェルスタッペン。これでいいじゃない。

 今日のレース展開にしても、VSC でハードタイヤに交換、旗色が悪くても諦めずにセーフティカーウィンドウ内に復帰してたから、最後のタイヤ交換ができたわけで、チェコのサポートを含め、劣るクルマで愚直に最大限の抵抗を試みてきたからこそ、あのファイナルラップがあった。バラエティのクイズ番組に例えるのは、間違いだ。バルテリがチェコに近い位置にいたら、フリーストップは得られなかった訳だし。

 ホンダは今シーズン、間違いなくナンバー1のパワーユニットを作り上げた。シーズン後半、メルセデスの新品が持つパワーが取り沙汰されたけど、信頼性を考慮に入れれば、ダントツ世界一。もの凄い安定性だった。有終の美を飾ったと言える。7年間、お疲れさまでした。そして、ありがとう。ファンなんだから批判もするけど、戻ってきたら必ずまた応援する。

 あと、メルセデスは強かった。特にディフューザーのストールを極めてからは、積極的にレーキをつけることもできて、現行レギュレーションにおける最高傑作に昇華させたと言ってもいいだろう。対してレッドブルには、後半戦の伸び代が殆ど無かった。メルセデスは後半に開発したと言うより、シルバーストンで入れたアップデートを理解し、最大限の能力を発揮させてきたと言うべきだが、マシンの総合力はメルセデスが上だった。コンストラクターズタイトルに相応しいのは、メルセデスだ。

 最終戦にしてやっと、角田が本領を発揮してくれたことは、ほっとすると共に、来季に期待を持てる内容だった。特に、VSC で得をしたガスリーとアロンソに順位を譲らなかったこと、詳しく見れなかったけど、ファイナルラップで4位にポジションアップしたのが素晴らしい。週末ずっとガスリーより速かったし、ようやく、一人前のドライバーとして当てにすることができるようになった。

 ルイスが気の毒すぎる幕切れだっただけに、チェッカー直後は嬉しさも小さかったけど、徐々に実感が湧いてきた。異なるチームのエースが火花を散らす。異なる哲学のクルマがサーキットごとに優劣を繰り返す。チームは毎週、総力を挙げて全力を尽くす。今年の F1 は、近年稀にみる面白さで、幸せな1年だったと思う。