開発競争の幕開け ― イモラで投入されたレッドブルとメルセデスのアップデート

出典:

www.formula1.com

 マーク・ヒューズとジョルジョ・ピオラが、エミリアロマーニャGPの週末に、レッドブルメルセデスがそれぞれのマシンに投入したアップデートを通して、白熱してきたイモラでの開発競争を評価する。

 イモラでは、スプリントを前に、それらをテストするプラクティスは1回だけにも関わらず、多くのチームがまとまったアップデートを投入してきた。レッドブルフェラーリという注目の構図においても、フェラーリがアップデートを見送る一方で、レッドブルはそれらを推し進めてきたため、大きな展開をもたらした。

 クリスチャン・ホーナーは、1-2という華々しい結果には、このアップデートが重要な役割を果たしたと確信している。曰く、「1回のセッションしかなくトリッキーであることは承知の上で、この週末、クルマにいくつか小さなパーツを導入した。

 しかし、マックスとチェコの卓越したドライビングと、素晴らしいピットストップや戦略、そしてもちろんミルトン・キーンズのファクトリーの支えもあって、1-2フィニッシュを達成することができた。多大な努力と働きによって失意のオーストラリアから立ち直り、この結果に繋げたんだ」

 マックス・フェルスタッペンは、アップデートによるものなのか、チームのマシンに対する理解が深まったことによるパフォーマンス向上なのか、確信はないようだ。「状況によっては、アップデートよりも大きい場合がある。あと何レースか見てみないとね」

レッドブルキールスプリッターに追加されたウィングレットは、この図のような、フェラーリに似たようなアレンジとなっている

 では、レッドブルのアップデートには、どんな効果があるのか?

 ひとつは空力、もうひとつは軽量化だ。後者は、バルセロナまでの2レースで10kg削減を目指す計画の一環である。これによってレッドブルは、重量面でフェラーリと並ぶとされている。イモラでは、開幕3戦で10kg過多と推定される重量のうち、約3kgが削減された。美しく設計されたブレーキキャリパーによるものが最も大きい。

 空力面で最も重要な変更は、キールスプリッターへのウィングレットの追加だ。これは、レッドブルのフロアで“ティートレイ”と呼ばれるエリアの前方に位置する。フロアのこの部分は、アンダーボティのトンネルへ向かう気流の通り道を調整するうえで重要な役割を果たすが、追加されたウィングレットは、フロアのこの部分で追加のダウンフォースを生成している。

 これには、空力により発生する圧力の中心を、やや前方に移動させる効果があるだろう。

メルセデスラジエーターの給気口手前に追加されたデフレクターと、ミラー周辺の空間の再編成は、小規模の空力アップグレートの一部であり、マシンのバウンシング問題とは切り離されている

 メルセデスにおいても、重量削減と空力的な調整が併せておこなわれているが、ポーパシング問題への対策を主目的としたものではない。

 様々な新しいコンポーネントが重量削減に寄与しているが、最も大きな削減は、新しいフロアから来ている。このフロアは、形状の変更は僅かだが、異なるカーボン成形で製造されている。

 空力面では、冷却効果を狙ったターニングベーンが、サイドポッドの吸気口の前方に追加された(上図)。

 アッパーインパクトビーム(上にはミラーと一連のベーンが配置されている)周辺のエアロ空間は、細く剥離していく気流が無くなるように、再編成されている。ディフューザーリアタイヤに近い部分のエッジは、渦巻きが抑えられ、この部分での気流の剥離を低減している。これに同期して、リアのデフレクターのエンドプレートが伸長されている。

ジョージ・ラッセルは、FP1でハイダウンフォース仕様のウィングを試していた...

...が、ラッセルは、ルイス・ハミルトンと同じローダウンフォース仕様を選択した。ラッセルは、ハミルトンとは違い、エッジにガーニーフラップを取り付け、僅かなドラッグと引き換えにダウンフォースを得ていた

「ただの空力開発だよ」と、トラックサイドエンジニアのチーフ、アンドリュー・ショブリンは語る。「バウンシングの問題とは、切り離して取り組んでいる。ここに持ち込んだ開発パーツは、そっちに効果が出ないことを承知でやってるから、集中して取り組めてるんだ。

 余談になってしまうが、バウンシングを理解し、収拾し、解決するために懸命に取り組んでいる。これはタイヤの熱入れと同様、競争力を得るために何とかしなければならない弱点だと考えているからね」

 チームは両系統のリアウィングを試していたが、ローダウンフォース仕様に落ち着いている(上のふたつの画像を参照)。

 フェラーリレッドブル、そしてメルセデスは、最も資金力のあるチームであるが故に、コストキャップ内に収めることが最も困難であり、それぞれの予算の中で技術開発をおこなっていく光景は、今シーズンの競争において、既に大きな見どころとなっているのだ。