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マーク・ヒューズが、アゼルバイジャンでポーパシングを抑えたと考えられるレッドブルのアンダーフロアは、どのように設計されているのかを確認する。技術イラストはジョルジョ・ピオラの提供。
バクーでは、いくつかのチームが未だにポーパシングに悩まされていることが明らかになるなか、優勝したレッドブルがこの現象のために妥協を強いられる様子がないのは印象的で、これはシーズン開幕当初から続いている。
レッドブルのアンダーフロアの設計は、特に最大のライバルであるフェラーリとは、そのコンセプトとディテールの両方で異なっており、モナコの予選でのセルジオ・ペレスの事故によって多くのことが明らかになった今、大きな注目を集めている。
これらの詳細が明らかになる以前、この設計の肝は、他のフロアに比べてトンネルの屋根が高く、かつアーチ状になっていることではないかと考えられていた。これによって、本質的にストールが抑えられているはずだと言うのだ。
クルマの速度が上がると、フロアは路面に引き寄せられ、グランド・エフェクト(トンネルの最も低く路面との隙間が狭いところから、後方の天井が高く低圧のエリアへ向け、気流が勢いよく流れることから生じる効果)がより強力になる。隙間が最後の数ミリまで近づくと、気流の速さと、それによるダウンフォースの総量は、指数関数的に増大する。
路面に近づき過ぎると、気流が失われ、ポーパシングの引き金になる危険が生まれる。屋根が高ければ、ダウンフォースは車高の影響を受けにくくなるが、理論上の最大ダウンフォースは小さくなる。小さな隙間(トンネルと路面との隙間)を抜けた空気の膨張によるものだからだ。隙間の後方の気圧が低くなり、そこを満たすために空気が流れ込む。
車高が下がれば、この高さの屋根でも空気の膨張率は大きくなるし、余分な圧力によって隙間が塞がれてしまう機会も減る。
更に、このような全体的なレイアウト中の細部にも、レッドブルのフロアには幾つか特徴的な処理が存在する。
エイドリアン・ニューウェイは、フロア下には多くの異なる気流が生まれ、それらを相互作用させることが鍵だと指摘した。フロア前方のインレットストレーキは、その全長に渡って形状が変化しており、これはトンネルの形状に合わせて気圧を均等化し、気流に力を与え、トンネルのより奥へ流し込んでいるのだろう。縦方向と横方向の形状を組み合わせ、異なる車高であっても可能な限り容積が変わらないように多大な労力を注いだことが見て取れる。
同様に、平坦な中央のキール部も、他のマシンのような滑らかな洋ナシ型(フェラーリを参照のこと)をしていない。それに沿うトンネルの様々な高さに合わせて形成されているのだろう。車高が下がると、当然、トンネル内に入る空気の容量は減少する。この形状によって、車高によるトンネルの容量変化をより均一化していると考えられる。
また、トンネル内には、少なくともふたつの特徴的な”小さなベンチュリ構造”が存在しており、車高が変わるとディフューザーのように機能し、ここで再度、気流を活性化する。レッドブル独自のものではないが、これもまた、レッドブルのアンダーフロアの効率を高めているディテールである。
最後に、リアホイールの手前でフロアが内側へ向け細くなり始めるところにある、”アイススケート”と呼ばれるパーツ(上図)に言及しよう。レギュレーションでは、リアホイール手前にミニウィングが許可されているが、フロアの上面とは規定されていない。レッドブルはこれを、アンダーフロアのこの位置で、気流をトンネル出口へより強力に向かわせる追加のストレーキ(傷つきにくいよう金属製)として解釈した。
レッドブルのフロアは、他のマシンのフロアと比べ、細部へのこだわりがあり、洗練されているように見える。良好なダウンフォースを生み出しつつ、比較的ポーパシングの影響を受けていないのは、偶然ではないだろう。