出典:
シルバーストンでは、メルセデス、アルピーヌ、アストンマーティン、そしてウィリアムズがマシンに大きなアップグレードを入れてきたが、マーク・ヒューズは、チャンピオンシップをリードするレッドブルのアップグレードに注目している。技術イラストはジョルジョ・ピオラの提供。
新しい空力レギュレーションの初年度である今年は、サイドポッドの形状に多様性が生まれ、それらはレッドブルのくびれたようなアンダーカットの傾斜を持つスタイルと、フェラーリのアウトウォッシュ重視の切り立ったスタイルのどちらかに収束しつつあり、メルセデスだけが『ゼロ』ポッドコンセプトを採用している、というのが現在の大きな流れだ。
バルセロナで、アストンのコンセプトは、レッドブルのボディワークに似たものに変更された(その後、シルバーストンで改良)。ウィリアムズは元々メルセデスに似た「ゼロ」コンセプトだったが、シルバーストンでかなりレッドブルに寄せたコンセプトに乗り換える一方、アルピーヌがシルバーストンで取り入れたアップグレードは、フェラーリのようにサイドポッドの上面に溝があるものだった。
他がそうこうしている内に、流行の最先端を行くレッドブルは微調整をおこない、それらは非常に効果的に見えたが、マックス・フェルスタッペンが予選で黄旗に邪魔されたり、決勝でデブリを拾ったりで、速さの片鱗しか見せていない。
RB18 の改良で最も目を引くのは新しいエンジンカバーで、特に下部4分の3あたりが目立っており、ここはサイドポッド上部の冷却用の気流出口と、リアウィングとその下のビームウィングとの空間につながりを持たせている。
この部分は大きく外側へ張り出し、まるで棚のような形状によって、下方へ傾斜するサイドポッドとの間に気流の通り道を作り出している。レッドブルによるとこれは、この先のレースに向け、冷却の選択肢を増やすためのものだという。この改良によって、ラジエータからリアの排出口へ向かう冷却用チャネルの容量が大きくなり、マシンの冷却能力が増すのは間違いないだろう。
通常、冷却容量の増加は空力的な妥協を伴うため、難しい。しかしレッドブルはこのアップデートによって、冷却と空力の両方を改善する方法を見つけたのだろう。
冷却用のよろい板は、コクピットのすぐ後ろから更に後方、新しい『棚』の上に移されている。また、サイドポッド上を通った気流は下へ向かい傾斜を下るが、この『棚』が効果的にトンネルを形成しており、通り道が更に明確なものとなっている。この傾斜が、リアホイールとディフューザーの出口との間への経路となることで、ここを抜ける気流の速度は、ディフューザーを抜けてくる気流を強力にし、ひいてはアンダーボディの働きを強くするという、重要な役割を担う。
サイドポッド上面の経路がトンネル状になることで、気流を以前よりも加速させるだろうし、冷却用のよろい板が傾斜の近くから『棚』の上面へ移されたことも、この気流の働きを向上させるだろう。よろい板から吹き出る(冷却に)使用済みの温かい空気は、空力的には乱れだからだ。
この改良は、フロアの微調整を伴っており、後方のフロアが露出しているエリアの切り欠きの内側に、舌のような形をしたベーンが取り付けられた。これはフェラーリがバルセロナに持ち込んだものと似ており、走行時、フロアが路面に接近した際の過度の圧力を和らげ、ストールと、それに続いて発生するバウンシングを抑制すると考えられる。これによって、車高を効果的に下げることができる。
コストキャップがあろうとなかろうと、開発競争が止まることはない。