フェラーリはマイアミのアップグレードフロアでどのように SF-23 を飼いならそうとしているのか?

出典:

www.formula1.com

 フェラーリはマイアミで、新型フロアと、序盤の数レースで使用していた単独支柱のリアウィングを投入してきた。このフロアは、イモラで投入されるボディワークの改良で完成するアップグレードの一部分だ。

 フェラーリは、設計通りの性能を示すかどうかを確認するため、パッケージの一部であるフロアを持ち込むことを選択した。チームのシニア・パフォーマンス・エンジニアであるジョック・クレアによると、「中高速コーナーでの安定性と、予測のしやすさを目的としている」

 この取り組みは、コーナリング速度が増すほど、ダウンフォースの発生がピーキーとなり予測がつかないとのフィードバックが、開幕の2戦でシャルル・ルクレールカルロス・サインツから上がったことによる。

 現行のヴェンチュリ・トンネルを用いたグランド・エフェクト・カーでは、アンダーフロアの圧力を再配分することで、空力的な一貫性を改善することができる。

フェラーリのフロア変更は、内側の3枚のフェンスと外側の『バージボード』の間隔を再調整すると共に、外側のフェンスとトンネル吸気口の屋根の形状を変えている
調整プロセスの基本3要素:
  • トンネル吸気部のフロアフェンス。
  • フロアエッジの形状変更、ここで発生する渦流はアンダーフロアの空力的な密封に寄与し、車体上面と下面との圧力差を最大化する。
  • 『キャノン』部の形状、2本のトンネル間の平坦な部分を指し、トンネルの全長に渡り、この部分のエッジでトンネルの幅が決まる。この呼称は、計画段階でのスリムなカヌー形の涙滴形状から来ている。しかし、この部分の開発が進むに連れて、この形状からは離れていく傾向にある。

 トンネルと、ボディワークの外側へアウトウォッシュする気流の総量は、限られている。これらの気流は、マシン後方、ディフューザーの排気口で再び合流することになる。

 吸気部のフェンスは、この分岐を明確にするとともに、フェンスの間を抜けるときに加速させることで、これらの気流にエネルギーを与える目的を持つようになった。

 フェラーリはフェンスの形状変更と再配置をおこなった。特に外側のフェンスは大きく伸長され、フェンスの屋根となる部分も変更されている。

フロアエッジ

 トンネルを抜ける気流は、フロアエッジの形状によって外側の気流を渦流として巻き込むことで、更に加速する。トンネルの外端に沿って発生する高速に渦巻く気流によって、隣接するトンネルを抜ける気流を加速し、効果を上げているのだ。

 この流れを速くすれば、発生するダウンフォースは大きくなる。しかし、規定された領域には単独の切り欠きしか許可されていないため、ここで得られるエネルギーには限界がある。

 フェラーリは、フロアエッジの前方部分をよりフードで覆ったような形状とし、渦流の強さと方向を調整しているようだ。

フェラーリの新型フロア(マイアミが下、対してバクーが上)は、前方でのヴォーテクス・ジェネレータを見直し、よりフードに覆われた形状とした。また、リアホイール前方の傾きも極端になっている
カヌー部

 フロアエッジの切り欠きの大きさには制限があるため、そこで生まれる渦流は必要な強さを得られず、トンネルの必要な場所にも届かない。これを補正するために空力担当者が用いる手段のひとつが、フロアのカヌー部の形状調整である。

 トンネルの長さ方向において、カヌーの外端の形状によって幅に変化を持たせることで、渦流とトンネルを抜ける気流との協調性を向上させるように圧力を調整することができる。

 全貌は確認できていないものの、ディフューザーの内側に見える後端を確認すると、フェラーリがカヌーの形状を変更してきたことが分かる。後端が更に細くなっているのだ。

 カヌーの形状変更は、トンネル内の気流にエネルギーを与える方法を変えることとなった。使える気流に限りがある中で、重要なのは、速度域や姿勢の変化を通してバランス良く、必要とされるところに気流を送り込むことであり、ダウンフォース量が最大化されることはないものの、運用上のすべてのパラメータにおいて最善のダウンフォース分布を得ることができる。このことで一貫性が向上し、ドライバーの自信に繋がるのだ。

ディフューザーの内側に見える後端が細くなったことから、マイアミでは『カヌー』部が再構成されたことが分かる

「このエリアをどう開発していくか、かなり明確になっている」と、フェラーリの変更について、クレアは語っている。「全体としてはダウンフォースを増やし、ドラッグを減らそうとしているのだが、最近は、繊細なところが非常に重要になってきた」

「空気をわずかに動かすことで、効果的にバランスをウィンドウに近づけ、低速、高速、ブレーキング、エントリーや立ち上がりなど、フロアの姿勢変化がある領域で、より一貫したバランスをドライバーに提供することができる」

「金曜日、(カルロスの方の)1台でこれを試し、期待通りの性能が出て安心できたので、午後は両方のマシンを移行した。両ドライバーとも中高速域で効果を実感しており、(予選での)シャルルの事故は、これによるものかも知れない。彼は4, 5, 6の高速カーブで攻めていた」

「冬の間に開発した新しいエアロパッケージは、適切なセットアップを見つけ出すのに時間を要したが、オーストリアで少し進歩し、アゼルバイジャンで大きく前進した。このフロアによって、マシンを更に良いウィンドウに入れることができる」