マクラーレンの2023年型マシンへの攻めの開発

出典:

www.formula1.com

 マクラーレンは、バクーとマイアミに大きなアップグレードを施したフロアを持ち込み、パフォーマンスの回復を試みた。では、このアップグレードは、どのような構成なのだろうか? マーク・ヒューズが、ジョルジョ・ピオラの技術イラストを交えて解説する。

 マクラーレンは直近の2戦をアップグレードしたフロアで戦ったが、これはマシンのローンチ以前から計画されていたものだ。当時から、チームは車高が調整されたレギュレーションの影響を理解するのに手間取ったことを認めていたが、今はそれが完了し、立て直しを図っているところで、バクーとマイアミに持ち込んだ新型フロアには、この変化が反映されている。

 目で見て確認できる部分からの推測ではあるが、フロア内のトンネル形状を全面的に変更し、その新しいトンネル形状に適合するよう、フロアエッジも変更している。トンネルの入口周辺のボディワークは非常に細身になり、フロアエッジ周辺の気流に影響を与えていると考えられる。

 これらの改良の狙いはアンダーフロアへの気流の分配を再構成することで、バクーでは、チームから次のように説明されている。「新型フロアでは、局所的な吸引力の配分、フロア構造の強度、および配置を変更し、全体的な負荷の増大に繋げている」

マクラーレンは5戦を終えた段階で、アルピーヌと同ポイントで並んでいる

 マクラーレンは、リアのフロアとディフューザーの地上高を引き上げた2023年のレギュレーション調整によって、自分たちが特に大きな不利益を被ったと考えている。彼らのトンネル形状は、フロアエッジの切り欠きやヴォーテクス・ジェネレータが、他と比べて後方に配置されているからだ。リアホイール手前のフロアを高くすると、後方にあるヴォーテクス・ジェネレータほど、効果が失われる。

 今年、ローンチ時の MCL60 は、他のマシンに寄せて、昨年よりも切り欠きを前方に配置していたものの、トンネルの形状は、昨年の哲学に基づいて展開されていた。

 新しい形状のトンネルには、前方に移されたヴォーテクス・ジェネレータと、気流が勢いを増すよう設計された改良とがもたらす特性を、最大限に引き出す狙いがある。これらは全て、トンネルを抜ける気流の速度を最大化するための取り組みなのだ。

マクラーレンは、MCL60 のヴォーテクス・ジェネレータを前方に移動させた。新しいフロアのレギュレーションを受けてのことだ
細身になった吸気口周辺のボディワーク

 トンネルの入口は以前と同様の幅を維持したものの、サイドポッドの真下、その入口周辺のボディワークはかなりタイトに絞り込まれ、下段のサイドインパクトビームを包含するのに必要な膨らみが確認できるほどだ。

 以前のボディワークはこの部分でマシンから気流をアウトウォッシュし、その先はリアホイールの手前に向けて、ボディワーク後方に抜けるチャネルを形成し、マシンのリアの働きを向上させていた。

 今回は、マシンのより前方から、フロアエッジの気流に勢いを与えることに重きを置いたようだ。フロアエッジの切り欠き部に向かう気流の経路上の障害を削減している。

 ヴォーテクス・ジェネレータの手前に配置されている、めくれ上がったような形状のウィングレットは更に際立ち、このことからも、マクラーレンが前方から気流に勢いを与えようとしていることが伺える。

枠内が『めくり上げウィング』、バクーからは一層際立った形状になった
リアフロアの変更

 ジョルジョ・ピオラのイラストから、リアホイール手前に位置するフロアのこの部分が大きく変えられていることが確認できる。フロアのボディワークは内側へ極端に寄せられ、タイヤスクワートによって高まった圧力を逃がす『舌』形のカットアウトは、外側が開放されている。

ジョルジョ・ピオラのイラストから、めくり上げウィング、フロアエッジの形状変更、リアの舌形ウィングの変更により、後方のヴォーテクス・ジェネレータを強化していることが分かる

 マクラーレンはこの改良により、空力バランスを変えることなく追加のダウンフォースが得られていると語る。しかしながら、マイアミでの低迷ぶりは、チームにグリップの低い路面での貧弱なマシンパフォーマンスに集中して開発すべきと感じさせたことだろう。ドライバーは積極的なブレーキングやスロットルの踏み込みができていなかった。

 このパッケージへの後続のアップグレードは、カナダとイギリスの週末に投入される予定だ。