一貫性に欠けるマシンへの対処を狙うフェラーリの改良型ボディーワーク

出典:

www.formula1.com

 スペイングランプリでは、フェラーリが大胆に改良したボディワークを持ち込んだ。チームにとっては厳しい週末になってしまったが、アップグレードの効果を発揮させるのは決して簡単なことではない。このことは、フロントロウからスタートするも、最終的に5位まで後退したカルロス・サインツが主張している。

「アップグレードは機能してると思うんだけど、持ち込んだサーキットが僕たちにとって最悪だったんじゃないかな」と、彼は語った。

 今年のフェラーリのマシンはリアの一貫性の無さに悩まされており、ふたりのドライバーも、突然スナップすると訴えている。最新のボディワークは、これを解消するよう、リアの空力負荷の増加と一貫性の向上を目的に設計されている。

 この目的を達成する上で、フェラーリはサイドポッドとエンジンカバー下部の形状を完全に変えたのだ。サイドポッドは依然として幅が広く、側面が切り立った形状(殆どのチームが採用している前部の深いアンダーカットとは対極にある形状)をしているが、上から見ると、幅の広い部分は前後方向に伸びている。

 また、その幅が少し狭くなっている。つまり、幅広の部分は未だ広いものの、以前よりは狭くなり、そして長くなったのだ。このボディワークと新型のフロアとの融合が、今回の改良の本質なのである。

フェラーリの新しいサイドポッドの幅が広い部分は、細く、かつ長くなった

この改良の狙いは、マシンのリアへ向かう気流の乖離を正すことだ

 フェラーリは、彼らの求めるものがここにあると信じているが、その根拠を理解するためには、昨年の F1-75 で採用された分厚いサイドポッドが機能する原理を知る必要がある。

 前部をアンダーカットの無い切り立った形状にすることで、気流がマシンの表面からアウトウォッシュされ、その気流は後方の、サイドポッドがコークボトルと融合し始める辺りで引き戻される。その先はディフューザー周辺へと繋がっている。

 コークボトル部の負圧によって、サイドポッド前方の切り立った部分からマシン後方へ向けてアウトウォッシュされた気流が引っ張られる。前方でアウトウォッシュされ、後方でインウォッシュされる(訳注:引き戻される)気流は、きれいな放物線を描くことが理想的とされる。

 気流を加速する手段として、マシンの表面から気流を引き離し、再び合流させる方法は、アンダーカットを持つサイドポッドを利用するレッドブル方式とは、全く異なっている。レッドブル方式は、サイドポッド前方を薄くカットして確保したチャネルが、エッジに沿って下っていく。

フェラーリはスペイングランプリに大きなボディワークのアップグレードを持ち込んだ

 このサイドポッドの後部で、サイドポッドの上から降りてくる気流が合流し、これらの気流が融合することで更に勢いが増し、リアホイールの間を通り、ディフューザーの上を抜けていく。

 『アンダーカットと下り傾斜』を組み合わせたレッドブル方式では、気流がマシンの表面を離れることがない。『アウトウォッシュとインウォッシュ』のフェラーリ方式では、離脱して戻ってくる2点間で、マシン表面から気流が離れる。

 これらふたつの方式が目指すところは同じで、ディフューザーウォールを超えていく気流の速度と力を最大化し、ディフューザーを抜けてくる気流をより強く引き抜くことだ(これによりマシンのアンダーボディが路面に吸い寄せられる効果が増す)。ただ、その方法が異なっているのだ。

フェラーリはサイドポッドとエンジンカバー下部を完全に変えてきた

 フェラーリがサイドポッドの幅の広い部分を細く、かつ長くしたことは、これら2点間を結ぶ放物線を描く気流が乖離、即ち彼らの意図した経路から外れ、気流のエネルギーが失われていると結論付けたことを意味する。

 気流の方向を急激に変えようとすることで、この乖離が生まれている。ポッドを細くすることで気流の曲率が浅くなるようにし、幅の広い部分を長くすることで、更にその曲率を浅くしているのではないか。

 もし気流の分離がスナップしやすいリアエンドの原因となっているなら、このサイドポッドの形状変更によって、安定性を得ることができるはずだ。