'Z形'フロアとは? 各チームが次々と追従した理由は?

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TECH. TUESDAY

新レギュレーションで失われたダウンフォースとスピードを取り戻すため、チームはフロアの改良を続けている。'Z' はそのトレンドワードだ。マーク・ヒューズが、ジョルジョ・ピオラのイラストと共に、このテクニカルイノベーションを解説する。

2021年のレギュレーションのもとでふたつのレースが行われ、我々は、少なくともひとつの領域において、優れたソリューションに収束しつつあるのを目にしている。その領域とは、フロアエッジである。イモラではフェラーリとウィリアムズが、上の写真にあるような、エッジを Z形にした新しいフロアを導入した。これで彼らは、既にレースで使用しているメルセデスレッドブルアストンマーティン、アルファタウリ、そしてアルピーヌに加わったことになる。ストレートエッジ派として残るはたった 3チーム、マクラーレンアルファロメオ、そしてハースである。

Z形にフロア側面をカット(下図の円内)すると、当たり前だが、フロアの面積を失うことになる。2021年のレギュレーションは、フロアの前方(フロントの車軸から 180cm 後方)と後方(リアタイヤの前、前から 100mm 内側)との 2点間に引かれた概念的な斜線を越えてはならないと規定しているに過ぎない。

これら 2点間に引かれた直線でフロア面積が最大になるのは一目瞭然である。ならば、各チームが敢えてそれ以上にフロアをカットするのは何故なのか?

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図の円内がフェラーリの『Z形』の切り欠きで、緑で強調しているのが、2021年のレギュレーションで許可されているが、使われていない部分

アンダーフロアで生じるダウンフォースは、フロアが生成する負圧と、その負圧が作用するフロア面積との積で決まる。Z形エッジは必然的にフロア面積を減らすので、暗黙的に負圧を増加させる必要が生まれる。トータルで、面積の減少により失われるよりも大きなダウンフォースが得られなければ、採用されるわけがないからだ。

Z形の切り欠きがフロアのパフォーマンスを向上させるメカニズムは幾つかある。切り欠き自体が、その上の羽根と組み合わさって、回転する空気の渦を生成し、その渦がフロアエッジの下側へ吸い込まれてアンダーフロアを密閉することで、負圧を維持しているのだろう。

これらの過流は、仮想『スカート』(1980年代に禁止された、物理的なゴムやセラミックのスカートにちなんでこう呼ぶ)として振る舞い、フロアの主要部分での気流を良好に保つ。この気流の速度を速くするほど、ダウンフォースは強力になる。フロアエッジで渦流を生成する役割は、これまでフロアスロットが担ってきたが、今年から禁止された。

また、単純に斜めのフロアエッジの場合、レギュレーションで直線のまま残されたフロア中央部の段差(下図)に対し、後方へ向け徐々にフロア面が狭くなっていくことによる気流の変化が問題となる。各チームが新しいフロアで空力シミュレーションを始めた頃、そのような気流は、周期的に現れる特定の速度域で反響していまい、振動を引き起こすことが報告されていた。Z形フロアはこの過程を除外し、気流を整え、より効果的にするのかもしれない。

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ジョルジョ・ピオラによる典型的な 2021年の F1 のフロア(Z の切り欠きなし)。緑で強調されているのが、中央にある厚板の段差。

フロアに Z形の切り欠きを入れることで、フロアエッジは Z の後方でも中央部と平行になり、全体的にアンダーフロアの気流を一定に保つことができる。

Z を車体後方のどの位置に形づくるかは、それぞれのマシンで大きな違いが生まれているが、これは恐らく、振動の影響度を反映してのものだろう。ウィリアムズ(下図)の Z形は、例えばフェラーリと比べると、かなり後方に位置している。

ウィリアムズは、両方のマシンを Q2 に送り込み、フロアがよく機能していることを示した。フェラーリは、金曜の午前中にカルロス・サインツ、午後にシャルル・ルクレールのクルマに搭載して評価をおこない、残りの週末は両方のクルマに搭載することを決めた。

マクラーレンアルファロメオ、あるいはハースは、いつ Z派に加わるのだろうか?

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ウィリアムズは Z の切り欠きをフェラーリより後方でおこなっている。イモラでは、両チームはこの切り欠きでいい走りをしていた。