メルセデスが2024年を見据えたスパのアップデートで想定外に再発した特性

出典:

www.formula1.com

 メルセデスはスパで、ボディワークに更なる大きなアップグレードを持ち込んだ。これは、ラジエーターの吸気口を新しくして、そこから続くサイドポッドのオーバーハングを強調し、流行している『ウォータースライダー』形の中程度のバージョンを有している。『ウォータースライダー』は、アストンマーティンとアルピーヌが先鞭をつけ、他のマシンへと広がったものだ。

 メルセデスは、この縦方向に広がった吸気口によってラジエーターへの気流の質を改善し、求められる冷却レベルに対して、空力を阻害するボディワークのルーバーの枚数を減らすことができると主張している。

 この新型の吸気口を形成するボディワークは、マシンの後方へかけて、流行に倣い、サイドポッド上部とアンダーカット下部を抜ける気流とを分離するための『筒』形状が強調されている。

 この筒部分の上面、『ウォータースライダー』状の下り傾斜が更に極端になった。これは基本的に、リアの『コークボトル』部のアンダーカットによる効果を高めるためであり、狙いは常に、リアウィングやディフューザー周辺へ向かう気流の速度を上げることだ。

新しいラジエーターの吸気口は、モナコで導入したものより縦長になっているが、破棄されたゼロポッドコンセプトの垂直な吸気口からは大きく異なっている

 この新しいボディワークと同時に、フロアエッジの後方部分にも改良が加えられ、このディフューザー周辺領域へ供給する気流を活性化し、引いてはアンダーフロアの気流の速度を上げ、そのパフォーマンスを向上させている。

 チームは、'22年から'23年にかけて採用され、既に断念した『ゼロ・ポッド』コンセプトに基づいた基本構造のために、マシン開発には限界があることを認識している。

 メルセデスのチーフ・テクニカル・オフィサー、マイク・エリオットは、これらのアップグレードがどの程度機能したかを評価する立場にあるが、アップグレードは比較的マイナーなものであり、その真価はチームが理解を深め、来年のマシン開発に活かされることだとしきりに強調していた。

この写真から、サイドポッド後部で強力になった渦を確認することができる。この渦により、リアタイヤディフューザーの隙間に気流を引き込むのだ

「これはモナコに持ち込んだアップグレードの改良に過ぎず、多くのパフォーマンスをもたらすようなものではないが、これによって我々は、いくつか異なる開発の道筋を検討することができた」と、彼は説明した。「その結果が、これなんだ」

「昨年、我々がいた位置からすると、大きく後退することとなった。これは我々が陥ってしまったところから抜け出すためだ。落ちてしまったなら、巻き返すだけだ。これはその一環なんだ。シャシーやギアボックスなど、大きな構造物を大改良することは、いつだって難しい。冬の間におこなうなら遥かに簡単だが、我々がやろうとしている事について、今年のマシンから学ぶことができる」

「以前にも言ったことだが、我々とマックスの現在地を見れば、今年のマシンから学べることは全て吸収し、来年には修正しなくてはならない」

ジョージ・ラッセルは新型リアウィングのハイダウンフォース仕様、ルイス・ハミルトンはローダウンフォース仕様で走行し、両方のマシンがバウンシングに悩まされた

 また、新型のロードラッグなリアウィングも持ち込まれた。ルイス・ハミルトンはこの中で、ダウンフォースが少なめのバージョンで走り、ジョージ・ラッセルはややハイダウンフォースで走った。両方のマシンが高速で空力的なバウンシング(現世代のマシンでは身近な現象)に悩まされたが、これはエリオットが示した限界の核心となるものだ。

 新たな開発によって、バウンシングが再発するほどのダウンフォースが生まれたのかもしれない。リアサスペンションの開発が十分に進まないことで、空力面での改善が制限されているのだろう。

 しかし、チームが負荷の効率性と、コーナリング中の様々な段階で如何にダウンフォースを発生させるかについて学んでいれば、全てが2024年のマシン開発において貴重な情報となるはずだ。このマシンは、完全に異なるアーキテクチャと、サスペンションのピックアップポイントを持つと考えられている。