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アストンマーティンは新マシン AMR23 を公開したが、新設計のマシンは昨年と比較してどこが変わっているのだろうか? F1 の技術エキスパートであるマーク・ヒューズが確認していく…
アストンマーティンの新型 AMR23 は、チームの技術部門の責任者が交代するなかで開発された。ダン・ファローズは新車開発の初期段階からかかわっていたが、前責任者であるアンディ・グリーンは F1部門から外れ、アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズを率いることとなった。
ファローズは2022年のパフォーマンスを改善するにあたり、非常に攻撃的なアプローチでチームを率いてきた。空力を大きく変えただけでなく、メカニカル面でも抜本的な見直しをおこない、マシンの軽量化にはかなり厳しくアプローチしたようだ。
見た目上、新車は昨年のモンツァでのアップデート以降のレッドブル RB18 と非常によく似ている。サイドポッドとエンジンカバーは特にそっくりだ。
昨年のアストンマーティン AMR22 は、スペインでボディワークに大きなアップデートをおこない、外観がオリジナルの RB18 にかなり近くなった。
しかし、アストンマーティンの開発は、実質的にシーズン半ばで終了する。対してレッドブルは開発を継続、新しいサイドポッドと、ボディワーク側面に沿った冷却用『キャノン』を生み出した。後者は、その下にある下り傾斜のついたサイドポッドとで、重要なリアホイール間への気流の経路を形成し、空力効果をもたらしている。
この特徴的なレッドブルのアップデートは非常に優れた効果を発揮し、2023年のマシンの何台かには、既に同様のものが採用されている。しかし、見た目の話ではあるが、アストンマーティンの新車ほど、忠実に再現したマシンはないだろう。
3次元的に確認すると、冷却系の排気ルーバーを持つ『バスタブ』がサイドポッド上面にあることが分かる('23年型マシンでは、ハースとマクラーレンがこの特徴を有している)。ここまで確認できたどの新車でも、このルーバーは、内側のショルダー部へ向けて高い位置に移っている。これは、ラジエーターが移動したことを示している。
昨年 AMR22 におこなったボディワークのアップグレードは、当時のレッドブルと外観が近づいたものの、アストンには冷却系の排気口にレイアウト上の限界があり、この空力哲学の利点を最大限に活かし切れていなかったのだ。この再設計をしたことで、チームはコストキャップの上限に肉薄してしまったと考えられる。
新型の AMR23 では、フロアの給気口がより理想的な位置になるよう、内部を望ましい配置に変更できたようだ。これは2023年の共通テーマである。最大ダウンフォースと、コーナーを抜ける際のバランスの一貫性との、より良い妥協点を狙ってのことだ。
フロントのノーズはメルセデスに非常によく似た、スリムで平坦なものになった。サスペンションは以前のままフロントはプッシュロッド、リアはプルロッド(昨年、レッドブルは反対の選択をしている)だが、ジオメトリは変更されている。
リアサスペンションとギアボックス(あとパワーユニットも)は、今年もメルセデスからの供給だ。
昨年、メルセデスのリアサスペンションを使うチームは、適正な可動範囲が得られず、当時の新レギュレーション特有の垂直方向のバウンシングに悩まされることになった。この問題は、今年の設計で解消してきたと考えられる。フロントのアンチダイブ・レイアウトは、更に極端になったようだ。これにより車体の姿勢が保たれ、空力に一貫性が出るだろう。
このマシンの方向性について、チームには明らかに楽観的な雰囲気が漂っている。それが妥当なのか、見てみようではないか。