2022年のリアウィングは、ゲームチェンジャーとなるべくどのような設計がされているのか

出典:

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 新しい空力レギュレーションが掲げる目標という視点から、過去2回の TechTuesday では、新型のフロントウィングと、アンダーフロアの解説をおこなってきた。これに続く最後のプロセスが、新型のリアウィングである。これは、マシンによる乱流が後続のフロントウィングから遠ざかるよう高く吹き上げると共に、ダウンフォースを発生するという従来の役割も果たしている。

 ただし、これまでのリアウィングほどのダウンフォースは得られない。これまでと同様、2枚のウィングエレメントで構成されるが、その形状と重なり具合は、より厳格に定められている。

F1 2022 - SILVERSTONE - 06.jpg  極めて特徴的なその形状は、エレメント、エンドプレート、そしてビームウィングによって構成され、鋭角的なラインを持たない一筆書きのようなフォームをしている。流線型の見た目よりも重要なのは、エンドプレートがウィングエレメントを囲っておらず、平坦に繋がっているため、エレメント表面を気流が横滑り、両端から抜けていくのを防げないことだ。

 これにより、その表面と裏面の圧力差によって機能するエレメントは、以前よりも効率的にダウンフォースを生成することができなくなるが、重要なのは、その表と裏の気流が両端で合わさる時に発生する空気の渦が大幅に減少することだ。この渦を減らせば、発生する乱流も減り、後続のマシンが不利を被ることも少なくなる。

 その上、渦を生成するような鋭角を避けるため、エンドプレートの角は、規定の円弧を描かなくてはならない。エンドプレートの、内側と外側の圧力差を均等にするためのスラットも禁止された。これもダウンフォースを生み出す効果を減少させるが、伴流の乱れを大幅に抑えることができる。

 また、エンドプレートは内側へ向けて劇的に絞り込まれている。前方から車体の上を通った気流がここに到達すると、このエンドプレートの絞り込みによって、リアホイールの内側へ引き寄せられる。このことで伴流が穏やかになり、後続のマシンを阻害する気流を防止することができる。

 この気流は、アンダーフロアのヴェンチュリから出た気流と合流する際も効果を発揮する。トンネル出口の(ビームウィングの裏面へと続く)傾きによって気流には仰角がつき、エンドプレートによって中央に集まった気流の圧力によって掃き出される。ヴェンチュリとビームウィングの仰角によって、ひとつに合流した気流は上方へ向けて放出されてゆく。

 ビームウィングは、2014年に禁止さた後、レギュレーションに復帰することになったもので、アンダーフロアのヴェンチュリの出口付近に低圧を作り出すことで、排気を促し、アンダーボディを抜ける気流の速度を上げる。このことでアンダーフロアによるダウンフォースは増加し、新型ウィング自体のダウンフォースの減少を相殺している。

2022年はビームウィング(赤い円)が復活する(2022年のショーカーに2021年のウィリアムズのカラーリングをリバリーしたもの)

 ウィングエレメントとエンドプレート、同様にエンドプレートとビームウィングとで、表面が重なってはいけない。これらは連続した線で描かれなければならず、理由はどちらも同じで、後続マシンに空力的な悪影響を与える渦流の発生を抑止するためである。

 マシン全体のダウンフォースは、昨年と比べてやや少なくなる程度と想定されているが、アンダーボディで発生するダウンフォースの比率が増加するため、相対的にウィングで発生する比率は減少する。

 ドライバーが前のマシンに追いつき、視界に相手のウィングを大きく捉えた時、突然フロントのダウンフォースを失うようなことは、もはや起こらない。ここ何年よりも接近してストレートに入ってくる2台の争いに、希望と期待を抱くことができるのだ。

2022年へ向けて知っておくべきこと(公式サイト、英文)