ミッドフィールドへの復帰を狙うアルファロメオのアップグレード

出典:

www.formula1.com

 2022年の開幕9戦での51ポイントに対し、ここ9戦で1ポイントしか獲得できていないアルファロメオは、強かった頃の彼らへの回帰を目論んでいる。F1 の技術エキスパートであるマーク・ヒューズが、ジョルジョ・ピオラ提供のイラストと共に、C42 の改良に注目する。

 アルファロメオは、2段階のアップグレードのうち、最初の1つを鈴鹿で披露した。C42 の新しいフロントウィングだ。2つ目は、この新しいウィングの性能を最大限発揮させるボディワークの改良で、今週末のオースティンに持ち込むとされている。

フラップアジャスターの中央寄りへの移動、小さくしたアッパーフラップ、エンドプレートの根本後方の切り取り、これらは C42 の新しいフロントウィングの、旧型に対する際立った特徴である

 シーズンも最終盤に差し掛かったこの時期に、大掛かりで、しかもフロントウィングのような高価なコンポーネントを含む改良を行うことになるが、単に、他と比べて生産能力が限られる小規模のチームだからに過ぎない。この改良によって、チームはシーズン序盤のような中団の先頭争いに加わることを期待しており、設計と計画に長い時間を費やしてきた。

 トラックエンジニアリングの責任者、ゼビ・プラジョールが鈴鹿で説明したところによると、このウィングの目的は「全体的なダウンフォース増加の一助となる事で、高速域でのダウンフォースと、低速から高速にかけてのバランスに注力している。そのために、高速コーナーが多いこのトラックに向けて準備を進めてきた」

 見ての通り、このウィングは従来のものから大きく異なっている。2枚のメインフラップはかなりスリムになり、内側のフラップアジャスターは僅だが更に内側、ノーズの横へ移されている。これにより調整可能なフラップの角度は浅くなるが、調整できるフラップの幅が広がる。

 ウィングの両端では、エンドプレートへと続くエッジの下部が、大きく切り取られている。フラップのこの切り取った部分で発生していた圧力差は減少するだろうが、フロントタイヤの外側へ向けより強いアウトウォッシュをおこない、車体の下を通りリアへ向かう気流をより良いものにしているはずだ。

 

C42 の旧仕様のフロントウィング(左)と、エンドプレート後方を切り取った新仕様(右)

 これらの改良が意味するところは、ウィング自体で発生するダウンフォースは減少するものの、(小さくなったフラップの面積により)アンダーフロアへ向かう気流と、(新型のエンドプレートにより)車体側面へ抜ける気流は、より大きくなるということだ。アンダーフロアを通りディフューザーを抜けてくる気流と、車体側面の低いところを抜けてくる気流との合流は、アンダーフロアで生まれるダウンフォースの総量に重大な影響を与える。

 つまりこれらの改良は、アルファが当初から目指していた全体的なダウンフォースをふやすという方向性と一致しているのだ。

「トラックへ持ち込む前に、ウィングには多くの時間をかけてきた」と、プジョラールは語る。「ウィングは期待通りに機能したかって? ここでは良好だったよ。我々は(鈴鹿に来る前に)ドライバーによるシミュレータ作業を繰り返してきた。オースチンではこのアップグレードの一部が更に加わるから、もう一歩、進歩できることを期待している」