バーレーンGPまでにポーパシングの解決方法を見出すチームは?

出典:

www.formula1.com

 マーク・ヒューズが、プレシーズンテスト期間中の、ポーパシングの軽減を図る各チームの取り組みを解説、更にバーレーングランプリへ向けて、この問題のベストソリューションを見出したチームはどこなのか、分析する。

 バルセロナバーレーンで開催された6日間のシーズン前の走行が終了しても尚、新型マシンをテストする各チームの最大の課題は、空力的なポーパシングと、それを抑制する手段である。

 ポーパシング ―― 主にストレートにおいて、車体が上下に暴れる現象 ―― は、アンダーボディのベンチュリ・トンネルを抜ける気流が、車体が路面に引き寄せられ、ストールすることで発生する。

 ダウンフォースを失うと、サスペンションが持ち上がり、気流のストールが解消し、再びトンネルによってダウンフォースが発生し、マシンは路面に引き寄せられ、気流はストールする、この過程が繰り返されるのだ。連打に見舞われるドライバーは言うまでもなく、マシンの信頼性にとっても間違いなく深刻な問題で、レースディスタンスを走り切るのが難しくなる程かもしれない。

 ベンチュリ・トンネルは、車体表面よりも裏面の気圧を低くすることで、ダウンフォースを生成する。トンネルが路面に近づくほど、この効果は大きくなる。車速が上がるほど、トンネルは路面のより近くに吸い寄せられ、連鎖的な現象が生まれる。

 しかし、車高が低くなり過ぎると、トンネルを形成しているフロア後方の外端は、トンネルが路面を吸い寄せ、サスペンションが沈み込むことによる路面との物理的な接触を防ぐほどの強度を持てなくなる。こうなると、トンネルが詰まり、機能しなくなるほどの密閉状態が生まれる。

バーレーンに現れた RB18 は、大きく改良されていた

 フロアは言わば大きな片持ち梁であり、その端に、高速時に路面に引き寄せられた時でも十分な強度を持たせるのは極めて難しい。

 これは、リアの車高を上げ、高速時でもストールポイントに到達しないようにすることで比較的容易に対処できるが、大きなパフォーマンス喪失は避けられない。

 とは言うものの、バルセロナでのマクラーレンは、ポーパシングをそれほど発生させずに競争力のあるダウンフォースを得ることができていたように見えた。バーレーンの最終日で今回のテストでの最速タイムを刻んだレッドブルは、それに倣って RB18 に手を加えたことで、他と比べてこの現象の影響を受けていないようだった。

円内:マクラーレンのフロア前方の側端に並んだ横方向の薄板。マクラーレンはここから大きな渦を発生させ、ポーパシングが発生するほどフロアを路面に近づけることなく走行しつつ、上手くダウンフォースを保っていた

 一方、メルセデスはこの現象にひどく悩まされており、ルイス・ハミルトンは現状をこうまとめている。「ダウンフォースを維持しつつバウンシングを解消するにはどうすればいいか、たくさんの異なるシナリオを想定して、取り組んでいるところなんだ」

 メルセデスフェラーリなどは、フロア後方の両端に金属のロッドを用いて、下に曲がって失速点に届いてしまわないように対策を講じていた。

メルセデス(上図)とフェラーリは、フロアにタイロッドを取り付け、下へ湾曲してストールするのを防いでいた

 そもそもマクラーレン MCL36 は、他のマシンとは異なり、フロアを地面スレスレで走行して密封しようとはしていなかった。マクラーレンはスキッド・ブロックを、ポーパシングが始まる位置より高くしていたのだ。

 テストでのランド・ノリスのコクピット映像では、高速走行時、バーレーンの路面にスキッド・ブロックを軽く擦っている音がはっきりと聞こえていたが、上下のポーパシングは発生していなかった。

 バルセロナの濡れた路面での映像から、マクラーレンはリアの車高が高めであるにもかかわらず、上手くダウンフォースを生成していたことが窺える。両サイドに強力な渦を発生させることで、高速走行時にフロアが路面に接触してしまうような車高でなくても、フロアをしっかりと密封できていたからだ。これにより、ストールしにくくなっているようだ。

バーレーンでのウェット走行では、MCL36 の強力な渦が確認できた

 バーレーンのテスト最終日、レッドブル(RB18 のサイドポッド前方に大きなアンダーカットを施してきた)は、少しレーキ角をつけて走行していたようだ。

バーレーンテストの最終日、レッドブルは RB18 にレーキ角をつけて走行した

 この時にテストでの最速タイムを記録しており、そのラップでは、他と比べてポーパシングが出ていないように見えた。以前のテクニカル・レギュレーション下において、レーキはダウンフォースの生成に一役買っていた。フロア前方の路面とのギャップを小さく、後方へ向けて広がるようにすることで、大きなディフューザーを持つフラットなフロアの効率が上がるからだ。

 しかし、フラットなフロアにベンチュリ・トンネルを持つ現行のレギュレーション下では、マシンの前後方向をより多く路面に近づける必要があり、リアを上げるとトンネルで生成するダウンフォースが減少してしまう。

 ポーパシングが発生する失速点に到達しないよう、ダウンフォースを維持するための調整デバイスとして、レーキ角を使っている可能性がある。失速点はトラックごとに変化すると思われ、レーキ角なら、リアのプッシュロッドやフロントのプルロッドを調整することで、ごく簡単に適切な設定にすることができるだろう。

 車高を低くすることでラップタイムを短縮することができるが、この方法には危険が潜んでいる。計画を台無しにするポーパシングの懸念があるからだ。各チームが競ってこの問題解決をおこなう様には、非常に興味をそそられる。