バーレーンの公式テストで嵌まるパズルのピースとは?

出典:

www.formula1.com

 マーク・ヒューズが、公式プレシーズンテストで多くの人が見過ごしている一面を解説する。今シーズン、ピレリタイヤが果たす重要な役割とは...

 トラック上での争いを促進しようと F1 が続けている取り組みにおいて、新世代のピレリタイヤのパフォーマンスは、新しい空力レギュレーションに匹敵する重要度を持つ。この新しいタイヤには、単に直径が13インチから18インチに拡大するだけではない、それ以上の違いがある。F1 からの要求は新旧で完全に異なっており、このタイヤはそれに適合するよう設計された。

 今週末、バーレーンサヒールサーキットで行われる3日間のテストでは、2週間前のバルセロナよりもより明確にパフォーマンスを確認できるだろう。

 各マシンが走行距離を伸ばしてレーススティントをシミュレートするだけでなく、タイヤに非常に厳しいトラックであるため、ラバーを目一杯使ってどれくらいプッシュできるのかが明らかになってくるはずだ。

バルセロナの走行では、今シーズンのピレリタイヤのパフォーマンスについて、ある程度の情報が得られた

 サヒールは、リアタイヤをオーバーヒートさせずに走るのが難しい。これまで、決勝で速く走るために重要な要素は、サーマルデグラデーションだった。恐らく今後もそうだろう。旋回時間が長く、(タイヤを冷やすための)ストレートも少なく、トラクションをかける回数が多いという特徴を持つこのトラックでは、変わりようがない。

 しかし、もしピレリがおこなったシミュレーションが正しければ、重要な違いが生まれることになる。熱くなりすぎた場合も、ドライバーがペースを落とせば、短時間で性能が回復するというのだ。以前のタイヤは、一度オーバーヒートさせてしまうと、コンパウンドが恒久的なダメージを受けてしまい、冷やすことができたとしても、十分なグリップを生む弾性は戻ってこなかった。

バーレーンの路面は、バルセロナよりもタイヤにかなり厳しい

 バーレーンほどタイヤに厳しくないトラックでさえ、デグラデーションがレースペースを決める支配的な要素となることが多かった。必要なスティントの長さを走り切るため、ドライバーは頻繁に、タイヤがダメージを受ける温度に達しないよう、ペースを落とさなければならなかった。このことで、バーレーンだけでなく、カレンダーにある多くのトラックで、ハードにプッシュして接近戦をすることができなかった。

 今回、トラック上での接近戦の促進を狙って空力レギュレーションが改定されたのと同様、タイヤへの要求も変化した。

 ピレリモータースポーツ部門代表であるマリオ・イゾラはバルセロナで、タイヤの第一印象を、こう語っている「今年のマシンは、タイヤにとって新たなチャレンジとなった。高速走行時のダウンフォースは以前よりも多く、低速時はかなり少ない。

 各コンパウンドはよく機能していたが、コンパウンド間の違いを把握するのは難しい。(スペイングランプリが開催される)5月の気温で走った訳ではないからね。

今週末のロングランが重要なのは間違いない

 一貫性の面では、ドライバーから、攻めた後にタイヤのグリップが回復したという声が聞けた。これは彼らが求めたことなんだ。新しいコンパウンドは作動温度領域が広く、オーバーヒートしにくいため、デグラデーションも小さいという特長を持っている。だからペースを管理する必要は少なくなっているはずだ。正しい比較は、バーレーンまで待つ必要があるけどね」

 タイヤの温度を適切な作動温度領域に留めておくことは、新レギュレーションで導入されるホイールカバーによって、更に難しくなる。ブレーキダクトに入った気流をタイヤの中心を抜けるように導き、空力デバイスのように利用することを、ホイールを塞ぐことで禁止するのだ。マシンを開発するにあたり、これは空力的に大きな悪影響は出ないものの、タイヤの温度管理にとっては大きなチャレンジとなる。

 ここでも、イゾラは楽観的な見通しを立てている「バルセロナで確認した結果で、かなり安心できた。昨年末のアブダビで新しいタイヤをテストしたけど、旧型のマシンでは、ホイールとブレーキダクトのマウント方法が問題で、新しいホイールカバーはテストできてなかったからね。今回がホイールカバーをテストした初めての機会となったわけだけど、期待通りだった。まあ、より実践的なテストはバーレーンだけどね」

 つまり、バーレーンのテストでのロングランは、シーズンを通してどのようなレース展開となるのかを明らかにする上で、例年以上の重要性を持つことになる。