ミッドフィールドの先頭でスタートしたアルファロメオの設計哲学の変化とは?

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www.formula1.c 2022年、アルファロメオはどのようにして C42 をミッドフィールド争いの有力候補としたのか? マーク・ヒューズが、次戦マイアミグランプリに向けランキング5位に位置するこのスイスを拠点としたチームを考察する。

 ここ最近のアルファロメオは目覚ましい向上を果たしており、イモラでは、ピットでホイールナットのネジが噛み合わず9秒をロスしなければ、バルテリ・ボッタスは表彰台を懸けて戦えていた。問題のあったピットストップ後、ボッタスはジョージ・ラッセルメルセデスとの11秒差をみるみる縮め、もしパスすることができていたら、3位のランド・ノリスにも届くペースを発揮していただろう。

 これは、C42 への大きな空力アップグレードによるものだ。3セットの変更が行われたが、これらはまとまって車体の気流を改善するものと考えられる。最も重要なのは、彼らが、マシンの空力に大きく影響するリアの“コークボトル”周辺の哲学を変えてきたことだろう。

アルファロメオは、イモラでのアップグレードで、コークボトル部の振る舞いに手を入れてきた。リアのボディワークは、両側に広がっている

 “コークボトル”はボディワークの下部、リアのフロアとエンジンカバーとの間の部分を指し、内側へ急激に絞り込まれている。これは1980年代以降、F1マシンの設計において標準的な手法となってきた。その原理は、突如開かれた空間では気圧が低下し、そこを満たすために気流が殺到するというものである。これによりマシン側面に沿う気流の速度が上がり、それに伴ってリアタイヤディフューザー上面との間の流速が最大化するのだ。

 原則として、この速度が上がれば、より多くのダウンフォースが生まれる。この気流は、アンダーフロアからディフューザーを抜ける気流を引き抜くからだ。絞り込みを極端にすれば、その分気圧の低下は大きくなり、更に効果が高まる。

 ここ数年のコークボトルは、サイドポッドのアンダーカットと共に、効果を追求する過程で極端になってゆく傾向にあった。このためボディーワークは、平面においても、断面においても、極端に絞り込まれている。これは、今シーズンの開幕3戦を戦った従来型のアルファ C42 の手法である。

 しかしイモラに向けて、コークボトル部のアンダーカットがなくなり、ボディワークがフロアに落ち込む場所が以前よりも外側へ移動し、リアタイヤ前方に確保された床面が小さくなった。サイドポッドは、低い部分が以前よりも膨らんでいる。

従来のサイドポッド(下)は、新しいもの(上)よりもコークボトルの絞り込みが大きい。これは明らかにトレンドとは反対で、今シーズンの新しいレギュレーションに向けたものだ。アルファはこのエリアのボディワークを広げ、曰く「リアタイヤ前方の気流を整え、ディフューザーへ向かう気流を改善」している

 アルファはこの変更について、「リアタイヤ前方の気流を整え、ディフューザーへ向かう気流を改善し、パッケージ全体での空力効率を向上させた」と主張している。今年の新しい空力レギュレーションでは、フロア裏面にふたつのベンチュリ・トンネルが設けられた。各チームはこれに適応するため、シーズン序盤でも依然として、ボティの上下に振り分ける気流の妥協点を模索している。

 フェラーリは、可能な限り強力なアウトウォッシュをおこなうよう、不格好で大柄なサイドポッドを大胆に採用したパイオニアである。アウトウォッシュは、以前はバージボードがこの役割を担っていたが、今は禁止されている。

 これらの変更によって、アルファの設計哲学は、よりフェラーリに近いものになったと思われ、アウトウォッシュによる改善によって、コークボトル部でのロスを上回る効果を得ているようだ。

 このサイドポッドの設計哲学の変更に伴って、アルファは、フロア先端中央のキール両側にある、小さなベーンの形状を変更している。これは、新しいサイドポッドを最大限機能させるよう、気流を整えるものだ。また、リアのブレーキダクトにも小さな変更が加えられており、これは、コークボトル周辺の変更によって変化した気流に対応している。

 マイアミへ向け、アルファロメオは25ポイントでコンストラクターズ5位にランクしている。これは過去2シーズンの合計よりも多く、2018年の半分に迫っている。