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重要なスペイングランプリを週末に控え、マーク・ヒューズが、ジョルジョ・ピオラのイラストと共に、レッドブルが各レースでおこなったアップデートを振り返る。
フェラーリのシーズン最初の大規模なアップグレードパッケージ(今週末のバルセロナでの投入が期待されている)を目前に、チーム・プリンシパルのマッティア・ビノットは、レッドブルの開発ペースに関心を寄せている。マイアミでは、RB18 には F1-75 に対して1周あたり 0.2秒のアドバンテージがあったと見積もっている。
「バジェットキャップもあることだし、どこかの段階でレッドブルの開発が止まることを期待している」と、彼はマイアミグランプリ後に語っている。「そうでないと、彼らがどうやってそれをやってるか理解できないんだ。次のレースでは我々がアップデートを導入して、可能な限りマシンを進化させる番になるかもしれない。レースのたびにアップグレードするような資金は無い。シーズン開幕以降、我々は開発をしていないんだ」
これは事実であるが、レッドブルはバジェットキャップにもかかわらず、バルセロナでのプレシーズンテストで最初のアップグレードをおこなって以降、コンスタントに開発を続け、戦闘力を上げている。昨年のメルセデスとのチャンピオンシップ争いにファクトリーのリソースを割いていた可能性が大きく、構想を練る段階において、フェラーリよりも始動が遅かった。そのため開発過程では、フェラーリよりも早い段階での開幕となったと考えるのは理にかなっている。
これまでのレッドブルのゲインを相殺するよう期待されているフェラーリのアップグレードの前に、マックス・フェルスタッペンが完走した3戦すべてが優勝という素晴らしいパッケージである RB18 に施してきたこれまでの変更をまとめておこう。
プレシーズンテスト
バーレーンでのテストの2日目、サイドポッドとフロアを完全に再構築する、最大のアップグレードがおこなわれた。
サイドポッドは冷却系の周辺がよりタイトなパッケージとなり、フロア上面の前端が更に突き出している。これにより、外側へ向かうアンダーカットの広がりが大きくなっている。これらに伴い、フロアエッジも変更された。エッジに沿って新しい“巻き形”が施され、フロアエッジに沿った渦流を更に強力にしている。
このアップデートでは、アンダーフロアの“スケート”が初めて登場している。これはフロアの後方へ向けた穴の空いた金属プレートで、フロアが路面に近づき過ぎて床下の気流がストールするのを防ぐと考えられている。
ジェッダ
ロードラッグが求められるサウジアラビアのトラックへ向けて、レッドブルは、下段のビームウィングの深さを浅くし、それに伴ってリアウィングのエンドプレートも新しいデザインにしている。対照的にフェラーリは標準のウィングをそのまま使い、単にフラップの面積を削るにとどめた。
メルボルン
オーストラリアでは、レッドブルはフロントウィングのエンドプレートを新しくした。これは前方の角が斜めに切り取られ、その外側のダイブプレーンは、新しくS字になっている。これらの変更は、気流の微調整と同時に、重量を抑える狙いもある。レッドブルは、最低重量から超過しているとされる10kgの削減に取り組んでいる。
イモラ
イタリアのトラックでも、レッドブルは開発のペースを緩めない。新しいフロア(形状は以前と同じだが、異なるカーボン成形を採用)によって更に重量を削減し、ブレーキキャリパーも再設計してきた。
空力では、フロア先端のキールスプリッターに、フェラーリのようなウィングレットを追加している。フロアのこの部分のダウンフォースを、これ自身によって発生させていると思われる。
マイアミ
マイアミでは、見た目上の大きな変化はないものの、一部の部品の中身をくり抜くことで、更に軽量化を進めてきた。これらは時間的な制約によって、元々は中身が詰まった状態で製造されていたものだ。
以上のように、レッドブルはここまでのどのレースでも、マシンのパフォーマンスを上げるパーツを持ち込んできた。対してフェラーリは、殆ど変わっていない。
開幕戦のバーレーンでは、フェラーリは十分に速く、シャルル・ルクレールはリタイアする前のフェルスタッペンを抑え切った。マイアミでは、フェルスタッペンが予選での不調を乗り越えて、ルクレールに追い付き、追い越し、引き離した。最初のピットストップ直前には、フェルスタッペンとフェラーリとの差は8秒に届きそう(訳注:8秒近くの差がついたのはピットストップ直後)だった。
フェラーリは今週末、大規模なアップデートパッケージによって力関係を元に戻そうとする一方で、レッドブルの開発が予算の問題で失速することを願っている。