メルセデスにとってタフなモナコになった理由は? 次の期待はシルバーストンか?

出典:

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 メルセデスはスペインで見せたペースをモナコでは再現できずに終わった。マーク・ヒューズがその理由を解説し、今後、シルバーアローが差を縮めてくるのはどのグランプリなのかを語る。

 好調なバルセロナの後、モナコでは精彩を欠いたメルセデス W13 について、ルイス・ハミルトンはこう話している。「ある程度は予想していたよ。前のレースでは、低速(区間)が良いとは言えなかった。決勝は OK でも、一発ではだめだった。だからここは厳しいと考えてたんだ。しかもバンプが原因で予想よりも悪くなった。低速、中速、高速、あらゆる所でバウンドがひどくて、すごく難しかったよ」

 これは、バルセロナ以前に苦しめられた空力的なポーパシング(スペインでほぼ解決している)ではなく、それとは別の、特異な車体のコンセプトに起因するものだ。

 モナコでは、車体が路面に打ち付けられるのを防ぐのに十分な弾性が、サスペンションに備わっていなかった。これは機械的な限界で、単にガチガチに固められた空力プラットフォームから来る、サスペンションへのしわ寄せに過ぎない。

モナコの金曜プラクティスから想定した予選ペース

 2022年のタイヤはサイドウォールが薄く、サスペンションには以前よりも弾性が要求される。モナコでのメルセデスのリアサスペンションは、この点において問題を抱えていたようだ。

 車体の足回りは、空力プラットフォームを安定させるため、非常に固くなっている。これによってダウンフォースを最大化し、高速トラックで見られたポーパシング問題を抑え込んでいるのだ。モナコでは、サスペンションを柔らかくすることができず、バンプに覆いかぶさって引っ掛かるような挙動になった。サスペンションの構造上、十分な動きをさせることができなかったのだろう。

 これによって、シーズン序盤に苦しめられたものの、徐々に克服してきたものとは別の問題が発生した。サスペンションの弾性不足が悪影響し、バンプの上では車体が路面に叩きつけられていたのだ。

 しかしこれは、これに紐付いた一連の妥協のきっかけに過ぎなかった。リアサスペンションの動きでボトミングを最小化しようとすると、チームはリアの車高を、一般的な市街地サーキットよりも更に大きく上げることになる。これはリアのダウンフォースの損失が大きい。

 モナコのタイトなコーナーを素早く抜けるために、ドライバーは敏感なフロントエンドを要求する。メルセデスフロントウィングを旧型(マイアミ以前)に戻した。これはフロントで発生するダウンフォースを増やし、ドライバーに敏感なハンドリングを与えるためである。マイアミで導入されたフロントウィングは、アウトウォッシュが強化されており、リアの空力をより機能させ、全体的なダウンフォースが増すが、フロントウィングで発生するダウンフォースは小さくなる。

 この旧型のウィングは、ルイス・ハミルトンジョージ・ラッセルモナコの市街地を走るのに必要なフロントの感度を与えたが、すでに車高を上げているリアを、更に厄介なものにしたと考えられる。

メルセデスがマイアミで採用したフロントウィング(上)はエンドプレートが切り取られている(黄円)、モナコではそれ以前の仕様(下)が使われた

 モナコで使用された旧型のウィングは、エンドプレートの下部を大きく切り取る処理(フロントタイヤの外側へ気流を掃き出し、車体後方へ逃がす目的)がされておらず、その幅全体でより多くの気流を捉える。

 ウィングでは、その上面と下面の気圧差によってダウンフォースが生じる。新型ウィングがそうであるように、外端から気流が漏れれば、この気圧差は減少する。

 予選後、ハミルトンはこう認める。「リアのダウンフォースが足りない。フロントには荷重があるけど、リアにはないんだ」

 W13 のコンセプトでは、モナコに適したセットアップウィンドウがなく、ここから続くふたつの低速コーナーを持つトラック(バクーとモントリオール)でも同様だろう。バルセロナで見せたようなパフォーマンスを発揮するのは、シルバーストンと考えられる。