鈴鹿でのフロアの微調整は、フェラーリのマシンデザインの方向性を示すものなのか?

出典:

www.formula1.com

 日本グランプリにアップグレードを持ち込んだフェラーリの開発を、マーク・ヒューズが解説する。技術イラストはジョルジョ・ピオラの提供。

 タイトルの望みは絶たれたものの、フェラーリは引き続き、F1-75 の開発を推し進めている。鈴鹿に向けて、高速域のダウンフォース増加を狙った新しいフロアを用意した。

 フロアは7月のフランスグランプリ投入したものに少し手を加えたものだ。拡大された内側の吸気口と、低く段差になった外側の吸気口は、そのまま残されている。

 今回は、フロント外側のベーンの形状を変え、トンネルの前後も少し変えてきたように見える。フロア後方の露出している部分は異なる柔軟性を持つと思われ、補強用のバーが短くなり、違う位置に取り付けられている。

 (スパから効力を発揮した)技術指令書039により、車高を決めることになるフロア中央のプランクのマウント方法が規定されてから、高速から低速まで安定したバランスを得ることが難しくなった。

 現在は、マシンが路面に接触する際に、以前ほどプランクとフロアの間に衝撃吸収効果を持たせることが出来なくなっており、走行時の車高を上げる必要が出る場合がある。これにより、特に低速コーナーでのダウンフォースが減少することになる。

「バージボード」部のベーンの形状変更は、フェラーリ鈴鹿で導入したフロアに施された微調整のひとつ

 速度が落ち、車高が上がった時でも(セットアップに関わりなく)気流が破綻せず、車体表面に沿わせて機能させておけるようなフロアを作ることは、非常に重要である。車高が上がると必然的にダウンフォースも減少するが、これをできる限り残すことで、多くのラップタイムを稼ぐことが出来る。

 プランクのマウント方法が決められた結果、どのマシンもリアの車高を上げざるを得なくなり、理想的なトンネルとその周辺のボディワークは、最早あり得ない。今回の微調整によって、走行時の車高でマシンを再最適化しているのだろう。

 車速が増して車体へのダウンフォースが強くなると、フロア後部の外側が路面に近づき、空力的なポーパシングを誘発することになる。この位置のたわみ易さを減らすと、高速域でもダウンフォースを上手くコントロールし、ポーパシングの発生を遅らせることができる。つまり、フロアが露出している部分の剛性を上げると、更に高いダウンフォースをつけるセットアップが容易になるのだ。

以前のフロアでは、補強用ロッドは、殆ど外側のベーン全体を覆う長さだった

 フェラーリのジョック・クレアは鈴鹿で、フランスで導入したフロアは期待通りの性能の発揮できたので満足しており、これによって今回の微調整を加えたバージョンに集中する自信が得られたと説明している。

「この競技では、パフォーマンスは相対的なものだ」と彼は語る。「そして我々はフランスで少しばかり後退してしまったようだ。新しいフロアを持ち込んだフランスでね」これがここ数戦、チームが金曜日のプラクティスを従来のフロアとフランスで導入したフロアとの比較に費やしていた原因である。「前のフロアを使ってみると、新しいフロアは確実に良くなっていることが確認できた」

新しいフロアでは、補強用ロッドの設置位置が違っており、フロア後方部分の柔軟性が異なることが示唆される

 レッドブルに対して競争力を失ったのは、レッドブルが大きく進歩したことによるものであり、フランスの新型フロアの性能が不十分だった訳ではない。

 今回の微調整されたフロアは、シンガポールにも持ち込まれていたが、使われなかった。

シンガポールでも使える状態だった」と、クレアは鈴鹿で認めている。「だが、これは高速域でのダウンフォースを改善したものなので、ここ(鈴鹿)の方が合ってたんだ。この先のサーキットに目を向けると、高速域でのダウンフォースがあれば少しは有利になると考えられるので、残りのシーズンはこのフロアで戦うつもりだ」