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アストンマーティンとレッドブルに続き、ウィリアムズが、数多くの穿孔を持つブレーキ・キャリパーというトレンドに追従した。メルボルンで、アレックス・アルボンとローガン・サージェントが乗る2台の FW45 に、このキャリパーが導入されたのだ。
現行のフェラーリに搭載されている一般的なキャリパーと比較すると、ブレーキディスクを挟み付けるパッドの周辺に、広範囲に渡って施された穿孔を確認することができる。
これにより、ブレーキディスクの冷却容量が増加し、冷却能力を保ちつつ、ブレーキダクトを小さくすることができ、空力的に有利になる。ブレーキダクトは、空力的には非常に厄介なのである。
一方で、穿孔によってキャリパーの質量が減ることは、熱が行き渡る物質が減ることであり、キャリパーが過熱しやすくなることを意味する。対処として、幾つかの穴にピンを立てることで、キャリパー本体から熱を逃がすのを助け、良好な熱伝導率を実現している。
このキャリパーは、従来の穿孔が無いものと比べ、ひとつあたり約200グラム、トータルで0.8kgの重量削減になる。これは、マシンを最低重量よりも軽くすることだけではなく、バネ下重量の削減でもあるため、更に価値があることなのだ。サスペンションに支えられたバネ上重量に比べ、ホイールやブレーキなどのバネ下重量は、マシンの姿勢やメカニカルグリップにより大きな影響を与える。
ブレーキキャリパーは、設計の自由度が残されている数少ない領域の一つである。この形状のキャリパーを製造するには、高いコストと時間のかかる工程が必要だ。
通常、従来型をひとつ製造するのに約12時間を要するのに対し、こちらは約20時間を要する。キャリパーに用いられるアルミニウム合金に穴を掘るための特別な設備も必要だ。ドリルの速度が速すぎると、発生する切削熱によりキャリパー歪みが生じ、スクラップになってしまう。
この穿孔とピンを持つキャリパーに切り替えたのは、ウィリアムズが3チーム目だが、他のチームも追従すると考えられている。