レッドブルがハンガリーに持ち込んだボディワークの大規模アップグレードを分析する

出典:

www.formula1.com

 ハンガロリンクでは、レッドブルがボディワークに今季2度目の大きなアップグレードをおこなった。これは新しくなったラジエーターの吸気口を中心に、ボディワーク上面の空力を見直したものだ。

 このアップグレードは、シミュレーション上はラップタイムにして0.2秒に相当するとされていたが、レッドブルはバクー以来初めて、ポールを逃した。とは言え、フェルスタッペンが僅か0.003秒及ばなかったに過ぎないが。

 新型の吸気口は薄くワイドになったが、これは以前のものがオリジナルからより薄く、よりワイドになったのと同じ変化だ。これに伴い、サイドポッドパネルの幅も広がっている。吸気口のアスペクト比が新しくなったことで、ラジエーターへ供給される気流の圧力が増し、冷却効率が向上し、結果的に生成されるダウンフォースが増加する。

 冷却用の気流の速度を上げる(ラジエーターを抜ける気流の総量を増やす)ことは、冷却容量の増加になる。そこを抜ける気流が、ラジエーターで発生した熱を吸収するからだ。ワイドになったボディワークに収納されているラジエーターのサイズも大きくなっていれば、これによって更に冷却容量が増加しているだろう。

 ここ数年、各チームはボディワークの幅を狭くし、ラジエーターの大きさを最小化してきたが、現行のグランド・エフェクト・カーにおいて、この空力哲学が進化することとなった。アンダーカット上部のボディワークをワイドにした方が、以前よりも空力的に有利であることが明らかになりつつある。

オリジナル(メルボルン仕様)からバクーでの最初のアップデート、そして今回のハンガロリンクでのアップデートを比較することで、着実に形状変化していくラジエーター吸気口を確認することができる。これらはすべて、冷却効率と空力効率との最適化を狙ったものだ

 ボディワーク表面の静圧を上げることで、アンダーカットを抜けてリアホイールの間へ向かう気流を、進行方向の変化による対向気流との交差や、ヨー(マシンの向きと進行方向との角度差)に対して、強化することができる。

 この最新アップデートによって、レッドブルは冷却性能と空力性能の両方を向上させていると思われる。

 レッドブルが基本的に0.2秒のゲインがあるこのアップデートを投入したにもかかわらず、ルイス・ハミルトンにポールを奪われた要因のひとつに、それぞれのチームが選択したボディワークの冷却レベルの違いが考えられる。

レッドブルは上面の冷却用のえら5枚すべてを開放し、ブタペストの高温に対処した

 サイドポッドの上にある冷却用のえらは、そこから出る熱せられた空気がダウンフォースを生み出す気流を妨害するため、空力的には大きな損失となる。しかし、比較的低速なサーキットでかなりの高温になったことで、冷却要求は非常に大きなものとなった。

 レッドブルは冷却用のえら5枚すべてを開放していたが、メルセデスはたったの2枚だった。メルセデスにとって、このことは予選でのペースを後押ししたものの、決勝ではパワーユニットをより保守的に運用することとなったはずだ。

 実際、フェルスタッペンを脅かす要素は皆無で、30秒以上の大差でレッドブルにとって歴史的な12連勝を収めた。