出展:
マクラーレンは、フェラーリに対して僅かなアドバンテージでモナコを迎える。しかし、ウォーキングの部隊は、この公国でのレースに向け、幾つか技術面で決断をしてきたようだ。ジョルジョ・ピオラのイラストと共に、マーク・ヒューズが解説する。
昨年が示すとおり、マクラーレンは今年も開発を継続している。そして、選手権の第5戦モナコをコンストラクターズ3位、予選で3番目に速いクルマ(下表参照)を持って迎える。これまでの4レースで、彼らは最速から平均してたったの0.5秒遅れである。大して2020年シーズンは、1.1秒だった。
順位 | チーム | 平均タイム |
1 | レッドブル | 1m 19.609s |
2 | メルセデス | 1m 19.615s |
3 | マクラーレン | 1m 20.108s |
4 | フェラーリ | 1m 20.173s |
5 | アルピーヌ | 1m 20.373s |
6 | アルファタウリ | 1m 20.410s |
7 | アストンマーティン | 1m 20.657s |
8 | ウィリアムズ | 1m 21.007s |
9 | アルファロメオ | 1m 21.066s |
10 | ハース | 1m 21.049s |
ただし、4番目に速いフェラーリとの差はハッキリとしない。ノリスがイモラで(ピラテラのトラックリミットを3cm越えたことで)抹消された3番手タイムを含めると、前に来るのだ。この2チームの争いは激しく、トラックの特性に応じて、アドバンテージは行ったり来たりする。
ここまでの傾向としては、マクラーレンは高速コーナーで大きな空力を得ており、ストレートラインでも速い。フェラーリは低速コーナーでの回頭性に勝っているようだ。つまり、モナコとの相性は、マクラーレンよりもフェラーリの方が良いことを示唆している。
しかしながらマクラーレンは、前戦バルセロナでかなり大きなアップグレードを持ち込んでいる。“Zフロア”派に加わり、関連してフロントウィングも変えてきた。マクラーレンは、フロアエッジを Z の形に切り欠いた(下図の黄色、点線は許可されているフロアエッジ)、所謂 Zフロアに切り替えた最新のチームである。
※ 訳注:点線は、昨年のフロアエッジと思われます。
この Z は、フロア下に吸い込まれることでアンダーフロアを密閉する渦流を生成する。これにより、アンダーフロアの負圧がフロアの横から抜けることを防ぎ、ダウンフォースを増やすことができる。このようにして、Z は禁止されたフロアスロットの役割を担っている。
この開発は、2021年のレギュレーションによって減少したダウンフォースへの対応であるものの、ドライバーがフロントアクスルにどれだけ荷重をかけられるかに影響する可能性がある。低速コーナーにおいて、ドライバーがクルマの向きをどれだけ攻撃的に変えられるかの限界、即ち、クルマを行きたい方に向ける時間を最小化するのは、多くの場合はリアの安定性によるもので、フロントのグリップ性能ではない。
バルセロナでのアップデートは、全世界に散らばるカレンダー上の全てのサーキットを念頭に設計されており、マクラーレンの低速コーナーで不足する機敏さを補うものと考えられる。当然、モナコでも恩恵を受けるだろう。
しかし、マクラーレンが新しいフロントウィングをそのまま使うかどうかは、興味深いところだ。このウィングは、クルマがピッチングに敏感なのを改善するために設計されている。ピッチ感度とは、上下動によってクルマのバランスがどれくらい変化するのかを表す。
ある程度のピッチ感度は好ましいが、敏感すぎるのは問題だ。低速コーナーへの進入時、ブレーキをかけながらクルマをダイブさせることでフロントウィングをより機能させ、方向転換を助けるのは構わない。しかし、急激なフロント荷重の増加にリアが追従できなければ、問題となる。
新しいフロントウィングは、裏面外端下の“気管”が大きくなっており、ダイブした時の急激なフロントグリップの増加は発生しない。しかし、モナコの低速コーナーでは、古いウィングで積極的に荷重をかけた方がいいのかもしれない。今は Z フロアによりリアエンドが強化されており、尚更だ。
マクラーレンが、フェラーリに対して苦しんでいる部分で何をしてくるのか注目してみよう。ライバルに合ったトラックでトップに浮上することができれば、マクラーレンのシーズンにとってよい兆しとなることは間違いない。