フェラーリ対レッドブル ― イモラの本命はどっち?

出典:

www.formula1.com

 マーク・ヒューズフェラーリレッドブルの戦力を分析、エミリアロマーニャ・グランプリの週末で、タイトルを争う2チームのどちらが有利なのかを考察する。

  信頼性の問題によって現在のチャンピオンシップポイントには反映されていないが、現時点で最速のマシンは、フェラーリ F1-75 と、レッドブル RB18 である。

 総合的にはフェラーリが勝っているが、レッドブルはここまで、ストレートエンドでの速さで優れていた。トップギアで引っ張るストレートが長ければ長いほど、このレッドブルの特性は効いてくる。レッドブルがここまででポールと優勝を飾った唯一のサーキットが、超高速のジェッダであることは、偶然ではないだろう。

サウジアラビアではフェルスタッペンがポールから優勝(訳注:ポールは誤りで正しくはセルジオ・ペレス)、バーレーンとオーストラリアの DNF により、順位には実力が表れていない

 フェラーリは低速コーナーと立ち上がりの加速が優れている。次のイモラのトラックは、短めのストレートで繋がったダウンフォースと加速が求められるコーナーが連続した後に、高速区間(セクター1)が配置されている。

 ここまでフェラーリは、レッドブルよりも大きなリアウィングを使う傾向にあり、両チームの有利不利を説明するのに一役買ってきた。

 リアのウィングレベルの選択は、典型的なダウンフォースとドラッグのトレードオフであり、マシンによって様々な考え方がある。アンダーボディでどれだけ効率的にダウンフォースを得られているかどうかは、この時に鍵となる要素の一つだ(フロアによるダウンフォース生成に伴うドラッグは、リアウィングのそれに比べると約3分の1)。

 エンジンの性能もまた、重要な要素となる。レッドブルはフロアで大きなダウンフォースを得ている、もしくはフェラーリのエンジンの方がパワフル、あるいはその両方なのだろう。

イモラは低速セクションの後に高速の第1セクターが続く(注:反時計回りのサーキット)

 マシンにはそれぞれ、クルマが最も効率良く反応する、“ハッピープレイス”とも言えるようなウィングの調整範囲が存在する。

 フェラーリのハッピープレイスは、レッドブルよりも大きなウィングの範囲にある。これは、大きなウィングが必要なサーキットにおいて、フェラーリレッドブルに対する優位性が最大化することを示している。薄いウィングが求められるサーキットでは、レッドブルの優位性が最大化すると思われる。また、これまでのレースが行われた3つのサーキットでの GPS 追跡データから、フェラーリが短いギアを使っているか、低回転域でのエンジンパワーが優れていることが分かる。これら3つのサーキット全てにおいて、フェラーリレッドブルよりも上のギアで抜けていくコーナーが存在したということは、全体的にギアが短いことを示唆している。

 より短いギアと大きなパワーは、レッドブルの高いストレートスピードを相殺するのに役立ってきた。ストレートへ向けたコーナーの脱出で十分にアドバンテージがあれば、ドラッグの低いクルマの方が速くなるまでに、大きな差をつけておくことができる。

 重要なのは、ストレートの端から端までの所要時間であって、スピードトラップでの速さではない。スピードトラップで最速のクルマが、下位のクルマより、ストレート全体では遅くなるという状況は、大いにあり得る。

スピードトラップで最高速を記録するクルマが、ストレート区間で最速とは限らない

 この観点でのフェラーリレッドブルの比較において、桁違いの感触を得られるのは、バーレーンのトラックでのデータだ。そこでのレッドブルは、ピット前のストレートエンドで非常に速かった。連続したターン1-2の脱出ではフェラーリより遅く、その先のストレートでも遅かったが、ターン4のブレーキングポイントに到達した時の速度は、僅かに速かったのだ。

 レッドブルは、(ターン1への)進入はフェラーリよりも遅いが、ピット前のストレートはフェラーリよりも短時間で通過している。しかし、それより短いターン4へ向かうストレートでは、ストレートエンドで遅いフェラーリの方が、ストレート全体では速い。更に短いターン10と11の間のストレートでは、レッドブルには十分な速さがなく、ストレートエンドでの速度もフェラーリより遅かった。

 メルボルンでは、金曜日にレッドブルのリアにグレイニングが出て、リアウィングの角度をフェラーリと比較すると大きめにつけたことから、この特徴は限定的になった。それでもまだイタリアのマシンより薄いウィングで残りの週末を走り切ったが、前2戦のトラックよりも差異は小さかった。

 これは、フェラーリのアドバンテージが最大化する状況を示している。アルバートパークでは、セクター3でレッドブルシャシーがバランスを崩していたため、データにそれが含まれているものの、リアウィングを大きくした場合、レッドブルフェラーリに比べて、それをラップタイムに結び付けられていないと考えられる。

 このマージンは小さく、それぞれのドライバーの走り次第で覆すことが可能ではあるが、現時点では、フェラーリの方が様々なレイアウトに対応できる速さを持っている。

 イモラの第1セクター(スタート/フィニッシュラインからトサのブレーキングゾーンまで)は、ふたつのシケインで区切られた長い全開区間だ。ここまでの考察によれば、レッドブルが力を発揮するセクターだと言える。残りのセクターは、繰り返しの加速がありパワーが有利に働く(特にアクアミネラリからの丘を駆け上がる区間は)ため、まさにフェラーリに誂え向きと言える。