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今週の Tech Tuesday では、今シーズン最後の5レースで訪れるトラックを検証、レッドブル RB16B、メルセデス W12、どちらに合っているのかを評価し、マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンとのタイトル争いの行方を占う。
残り5レース、その後には何もない。マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンのポイント差は小さく、次のレースで順位が入れ替わる可能性がある。更に、ここまでの傾向から、レッドブル・ホンダとメルセデスのどちらかに明確なアドバンテージがあるとは言うことができない。
我々がどちらかが速かった理由を理解することができるのは、その週末を終えた後、つまり結果論でしかない。しかし、これまでのレースと、昨年のレースから、少なくとも手掛かりは得ることができる。それでは、1レースずつ見ていこう...
Drivers' Championship standings
POSITION | POINTS |
---|---|
1 Max VERSTAPPEN Red Bull Racing | 287.5 |
2 Lewis HAMILTON Mercedes | 275.5 |
メキシコシティ
海抜2,000mを超える高地での開催は独特のチャレンジを伴い、歴史的にメルセデスに向かい風となってきた。彼らのターボは空気が薄いところで熱くなる傾向にあり、結果的に、目標とするブーストに届いていなかった。ブーストは、ターボの大きさと、回転数によって決まる。空気が薄いほどターボの回転数は上がり、より多くの空気を圧縮できるため、酸素濃度の低さを補うことができる。しかし、熱の問題によって、上げられる回転数には限りがある。薄い空気はまた、冷却効果も乏しく、そのため彼らは不利を被る。
ホンダのパワーユニットは、ここでは歴史的に良いパフォーマンスを発揮してきた。前回の F1 開催時、フェルスタッペンは予選で最速タイムを出している(しかしその後、黄旗無視でペナルティを受けた)。
空気が薄いと、ダウンフォースとドラッグは小さくなる。これは誰にとっても同じだが、レッドブルにとって有利だろう。概念的には、彼らのハイレーキはダウンフォースの上限が高く、ここはダウンフォースを最大にして走るトラックだ。メルセデスのローレーキコンセプトは、ドラッグが小さい傾向にあるが、このトラックでは、標高が低いところと比べて、この優位性が小さくなる。冷却の問題への対処として、全てを適切な温度領域内に保つよう、ボディワークに幾らか穴をあける必要があり、メルセデスは更に空力的な妥協も強いられるだろう。
判定:レッドブル
ブラジル
ブラジルは、オーストリアと並んでカレンダーで2番目に標高が高いトラックだが、800m ではメキシコほどの影響は出てこない。影響はあるにはあるが、強くはないということだ。
メルセデスは、メキシコに比べてパワーユニットで妥協する必要がなくなり、少なくともホンダと渡り合えるはずだ。前回開催時は、ホンダが追いついてくる前だが、パワーでアドバンテージを持っていた。ジュンカオンからピットストレートまでの丘を駆け上がる区間は、純粋な全開勝負であり、ここでの PU 比較は非常に興味深い。
ドラッグとダウンフォースの観点では、インテルラゴスは多くの組み合わせを許容する。即ち、全く異なるダウンフォースレベルで、同程度のラップタイムを刻むことができるのだ。ダウンフォースを取るかドラッグを取るかで、影響の出方は異なるものの、ラップ全体での効果はほぼ同じになる。ただし雨が降った場合、ここではよく降るのだが、この時はダウンフォースがより重要になる。
レース前に、やっかいな状況を抜きにして考えるとなれば、ややレッドブルに有利と思われる。ただし、有効なセットアップやタイヤの使い方次第で、埋まらない差ではない。
判定:僅かにレッドブル
カタール
F1 初開催であるため、実績はない。ただし、ロサイルのトラックレイアウトは、低速コーナーはふたつだけで、多くの中高速コーナーで構成されており、タイヤを休ませる暇がなく、通常よりもタイヤのバランスを保つのが難しくなると思われる。レイアウト的には、ハイレーキのレッドブル、ローレーキのメルセデス、どちらにも明確なアドバンテージはなく、タイヤのパフォーマンスが決め手になる可能性が高い。
タイヤの使い方という点でも、どちらが優れているという決定的な要因はない。直前のオースチンでは、レッドブルの方がリアのオーバーヒートによく対処できていた。しかし、メルセデスが勝ったバルセロナは、見た感じロサイルと似たようなチャレンジがありそうで、彼らはスティント後半でのタイヤが素晴らしかった。
バクーでは、レッドブルの方がタイヤをうまく使っていたが、彼らのリアウィングは大きく、メルセデスはかなり薄かったので、そうなって当然だった。フランスは、レッドブルがスティント後半で速く、フェルスタッペンはそれを最大限に活かし切った。
このトラックは、ピットストップによるアンダーカット/オーバカットで争われる典型的なレイアウトだ。
判定:引き分け
サウジアラビア
完成まで間近の新設トラックであるジェッダサーキットは、27のコーナーがあるが、殆どを超高速で抜けていく。見た限り、トップギアで全開のコーナーも多い。
ここではロードラッグのコンセプトが威力を発揮するので、必然的にメルセデスが有利となる。
状況を複雑にする要素といえば、タイヤしかない。メルセデスは、イモラで顕著だったように、予選やスティントの前半でのフロントタイヤの熱入れに苦労することがあり、ロングストレートで同様の症状が出るかもしれない。ストレートではタイヤの温度がかなり失われてしまう。
判定:メルセデス
アブダビ
これまではメルセデスの牙城だったが、昨年、レッドブルとフェルスタッペンがそれをひっくり返し、ポールから圧勝した。彼らは最終セクターのタイトなターンや切り返しで速く、これは RB16B に比べ、全体的にメルセデスに対して競争力の劣っていた RB16 によるものだった。
しかしながら、これは明らかに公平な比較ではない。メルセデスはマイレージの嵩んだパワーユニットを使っていたし、既に両方のタイトルを決めていた。対してホンダのパワーユニットは、かなりフレッシュだった。
高速で抜ける第1、第2セクター、タイトで切り返しが多い第3セクターというレイアウトは、ふたつのクルマにとって絶妙な配分となっている。どちらがベストなセットアップを見出し、予選で最速となるのか、ここで決まってくる。
判定:引き分け