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マーク・ヒューズが、ジョルジョ・ピオラの技術イラストを交えて、モンツァでのレッドブル、フェラーリ、メルセデスのウィング選択と、そこから読み取れる各マシンの特性を解説する。
モンツァは、ストレートの速さが最もラップタイムに影響するトラックであり、ここでのトップ3チームのウィング選択は、それぞれのマシンの空力効率に大きな幅があることを示している。
今年、他のトラックで感じられた兆候が、ここでは更に強調された。それは、レッドブルの空力効率が間違いなく最も優れており、メルセデスが(トップ3の中では)最低、フェラーリはその間のどこかに位置しているということだ。
全4社のパワーユニットサプライヤーは、GPS 追跡データの解析によって、性能差はごく僅かしかないと主張している。つまり、モンツァで目にした3チームのマシンの違いは、それぞれのマシンのドラッグを相対的に示している。
しかし、マシンのドラッグは、各チームが自ら選択したリアウィングの大きさに依るものでもある。マシンが効率的にダウンフォースを生成していれば、リアウィングの調整幅もより大きくなる。
ダウンフォースは常にドラッグを伴うが、これらの妥協点は、トラックごと、またマシンごとに様々だ。空力効率は、同じだけのドラッグを増やすことで、どれくらいのダウンフォースが得られるか、あるいは、同じだけのドラッグを減らして、どれくらいのダウンフォースが失われるかによって、表すことができる。
モナコの直線的なレイアウトは、他のいかなるサーキットよりも、明らかに低ドラッグが有利となる。このため、すべてのチームが他のトラックよりも薄いウィングで走ることになる。同じドラッグのマシンであっても、よりダウンフォースを残している方が速い。通常ほどではないにせよ、依然としてダウンフォースには恩恵があるのだ。
レッドブルがモンツァで使ったウィングは、他のどのライバル達よりも表面積が大きい。メインプレーンは皿のような窪みがあり、フェラーリやメルセデスの完全に平坦なものとは対照的だ。RB18 のメインプレーンは通常よりも小さいものの、この皿のような輪郭のおかげで、間違いなく上面と下面との圧力差が大きくなる。これにより、ダウンフォース、そしてドラッグが、より大きくなる。
レッドブルは、アッパーフラップにも積極的に角度をつけ、更にダウンフォースを得ていた。チームは FP1 で切り欠いたものを試していたが、その後は元に戻している。また、ビームウィングも2枚を維持している。ビームウィングは、メインウィングの下を通る気流を調整し、ダウンフォース(とドラッグ)を増加させる。
RB18 の空力効率によって、大きなウィングをつけた状態で、ストレートでフェラーリと同程度、メルセデスを上回る速さを達成していた。
フェラーリは、レッドブルよりも小さなメインプレーンと、面積の小さい1枚のビームウィングを使っていたが、メルセデスよりは大きかった。ストレートでのパフォーマンスはレッドブルに匹敵していたが、フェラーリのマシンはレズモやアスカリでダウンフォースが足りていなかった。
メルセデスは、可能な限りのドラッグを削り、かなりのダウンフォースを犠牲にしていた。
彼らはフラップを最大限小さくし、ビームウィングも1枚とし、平坦なメインプレーンで走行した。予選と決勝では、フラップの縁に付けていたガーニーフラップすら取り外している。にもかかわらずメルセデスは、ストレートでもラップタイムでも、3チームの中で最も遅かった。
F1 はこれからドラッグの影響度が低いトラックに戻るため、各マシンの空力効率の違いによるパフォーマンス差は、モンツァで見られたようなものよりは小さくなるだろう。