アルファタウリの最新アップグレードを分析、0.3秒の短縮、後続の開発とは?

出典:

www.formula1.com

 今週の Tech Tuesday では、オーストラリアにフロアのアップグレードを持ち込んだアルファタウリに焦点を当てる。見た目よりはるかに多いアップデートが存在することを、マーク・ヒューズがジョルジョ・ピオラのイラストと共に解説する。

 アルファタウリがオーストラリアグランプリに持ち込んだ新型フロアは、当たり障りのないアップデートのように見えるが、細部まで確認してみると、昨年導入されたグランド・エフェクト・レギュレーション下において、チームがどの領域にラップタイムを改善させる可能性を感じているのかを洞察することができる。また、たったひとつのアップデートに、膨大な労力と研究が必要とされることも分かる。

 アルファタウリのテクニカル・ディレクター、ジョディ・エギントンは、今回の変更についてこう語っている。「小さなアップデートの積み重ねだ」と、彼は話す。「そして、これらは今後のマシン開発の新たなベースラインとなる。ここから我々は、ビームウィングやボディワーク、その他のアップデートを開発することができる。フロアの気流がより堅実になったことを分かっているからね」

「新しいフロアは、コンマ数秒に相当するダウンフォースだけでなく、フェンスやフロアエッジで生まれるヴォーテクスの安定性も増している」

「現在の開発は、リアの車高が高い時、つまり低速コーナーでのパフォーマンスに焦点を当てている。現時点では、最も大きくラップタイムを短縮できるのはここだと考えている。リアの安定性が増せば、コーナーへのコミットが早く、早めに動くことができる。V字の傾向が少なくなるんだ」

「そしてエイペックスでは、バランスを調整するためのメカニカルツールがある。これによって、コーナーの中央での最低速を引き上げることができる。我々が目指すこれらの変更や開発の方向は、車高が高い時の優れた安定性を狙ってのものだ」

形状と配置間隔が見直されたトンネル入口のフェンスは、新旧の比較(上図は旧型)で確認できる...

...こちらは新型(上の円内)。別角度から新型フロアの前方(下の円内)を見ると、フロアの表面形状から、フェンスが再構成されたことが読み取れる
メルボルンでのフロア変更の構成:
  • トンネル入口の新型フェンス。4枚のフェンスは形状が変わり、それぞれの間隔も変更された。これらのフェンスは、アウトウォッシュする気流とトンネルへ送り込む気流を分けるだけでなく、ヴォーテクスを生成し、トンネルに入る気流に勢いを与え、フロアエッジを密封する(スカートによって物理的に密封することは一切禁止されている)。「我々は、ヴォーテクスの強さをより上手くコントロールして、エネルギーのロスを減らそうとしている」とエギントンは語っている。
  • 新型のフロアエッジ。フロアエッジの(認められている切り欠きや、フロアエッジのウィングも含めた)形状によっても、フロアを密封するヴォーテクスを伝播させることができる。ヴォーテクスによってエッジ部分でトンネルを密封することで、車体の裏表での圧力差が大きくなり、効果的にマシンを強く吸い付けることができる。フェンスを変更すると、そのフェンスから流れてくる気流も変わる。この気流を最大限機能させるために、通常、それに伴ったフロアエッジの形状変更が必要になる。「我々は、フロアの前方部分に変更を加えた」と、エギントンは語る。「フロアエッジのウィングレットは、以前のフロアと大きな違いはない。その後ろ、裏側の見えないところに変更を加えて、ヴォーテクスを調整した。次のステップとして投入するフロアは、異なるフロアエッジを持っているだろう」。次のフロアは、イモラで登場する予定だ。

昨年のレッドブルのフロア(上図)から、トンネル間のフロアがフラットな『カヌー』部分の輪郭が、連続性のないものになっていることが分かる。今年はアルファタウリを含む他のチームが追従し、トレンドとなった。本記事後方にあるメルセデスに代表されるような、昨年当初に採用されていた標準的な涙滴型とは対照的だ
  • 新しいカヌー形のトンネル間形状。これは、ふたつのトンネルの間にある、フラットな部分を指している。現行のレギュレーションが導入された昨年、誰もがレッドブルはこの部分を単純な涙滴(あるいはカヌー)形にしてくると予想した。しかし、レッドブルは一歩先を行き、不連続な形状を採用した。様々な車高や姿勢において、より一貫してダウンフォースを得るため、トンネルの体積を調節するのが狙いだ。アルファタウリを含む他のチームも、2023年は(訳注:2022年のうちに?)この方向性を踏襲している。気流が後方の開けた空間に広がる際、あるポイントで気圧が低下することに関し、「気流の開放という点において、このカヌー形状は大きな役割を果たす」と、エギントンは語る。これによって気流を加速させることができるはずで、気流を速くすれば、得られるダウンフォースも大きくなる。「つまり、決まった幅があったとして、不連続とまではいかなくとも、その形状を変えることで、拡縮比を変化させることができる。その上で、フロア前方のフェンスで生まれるヴォーテクスが、合流が早すぎたり、あるいは合流しなかったり、意図したとおりに機能していなければ、このカヌー型に不連続な部分を追加して、ヴォーテクスを強力にすることができる」

昨年序盤、多くのチームが採用していた涙滴型のフロアデザイン
  • 新型ディフューザーエギントン曰く「表面と下部を新しくしている。横方向の面を少し変えることで、タイヤの乱流によるロスを減らし、ディフューザーのパフォーマンスを損なっている部分を減らそうとしている」

 この変更は、それ自身で約0.3秒のラップタイムに相当すると考えられているが、エギントンは、以後の開発の基礎であるに過ぎないと主張している。