なぜレッドブルにはレギュレーション変更以上のペース改善があるのか

出展:

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レッドブルマックス・フェルスタッペンモナコGP優勝によって、2013年以来のチャンピオンシップリーダーとなった。この成功に、2021年のレギュレーションがどの程度影響しているのか、あるいはそれ以上のものがあるのか、マーク・ヒューズが、ジョルジョ・ピオラのイラストと共に解説する。

レッドブルの RB16B は、開幕5戦で2勝を挙げ、ドライバーのマックス・フェルスタッペンはワールドチャンピオンシップをリードしている。チームには昨年よりも明らかに競争力がある。昨年の予選は、支配者のメルセデスから平均0.6秒落ちだった。

これら上位2チームの差が拮抗した主な要因は、2021年のフロアと空力のレギュレーション改訂によるものと考えられる。この改訂は、レッドブルのようなハイレーキ・カーよりも、メルセデスのようなローレーキ・カーから多くのパフォーマンスを奪った。確かにこれは間違いではないが、レッドブルが2021年のクルマを大きく進化させてきたという事実を覆い隠すほどのものではない。

下図は、2021年の RB16B と、同年のアルファタウリ AT02 のリアサスペンションとギアボックスを比較したもので、AT02 は昨年のレッドブルのリアエンドを使っている。この比較図からは、トークン消費により開発を制限するレギュレーション下においてさえ、レッドブルがこの部分でアドバンテージを追求してきたことがよく分かる

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レッドブル RB16B では、ロワウィッシュボーンをディフューザーへ向かう気流を増大させるのに利用している

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アルファタウリ AT02 のリアサスペンションレイアウトの図から、レッドブルが2020年から2021年にかけてクルマを進化させてきたことが分かる


レッドブルが既存のマウントポイントを巧妙に維持したまま、サスペンションを後方にずらすことに成功し、ディフューザー周辺の気流を増加させたことを我々は既に確認している

しかし、リアエンドを下から見ると、ロワウィッシュボーンをより幅の広いエアロフォイルとして利用していることが分かる。前方のウィッシュボーンの外端には小さなフィンがあり、気流を望ましい方向に導いている。更に空力を極めたサスペンションレイアウトと言える。

ディフューザー周辺の気流が増大したことは、車軸の前方、車体中央の三角形の“ヒール”が、どれだけ狭くなったかで理解できる。最新のレイアウトでは、ドライブシャフトにも極端な角度がつけられている。これは空力的に不利なエリアの外にシャフトを逃がすだけでなく、クルマに更にレーキをつけられるようにしている。

このように、昨年のレッドブルと今シーズンの RB16B との物理的なパーツ比較は、チームの復活が、有利なレギュレーション変更によるものだけではないことを示している。